ソロで生きる力@荒川和久

独身研究家として、テレビや新聞・雑誌などのメディアに出演しています。著書「結婚滅亡」「ソロエコノミーの襲来」「超ソロ社会」「結婚しない男たち」など。東洋経済オンライン等でコラム執筆しています。執筆・取材・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージからお願いします。https://www.facebook.com/profile.php?id=100008895735359

男が結婚できない都道府県はどこ?最新ランキング発表!

日経COMEMOのコラム、6回目です。

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拙著「結婚しない男たち」や「超ソロ社会」にも書いて話題になった日本の男余り現象について書きました。

男余り率…オトコアマリリツ

マリリスみたいな響きですが、ちっともロマンチックじゃない話です。

comemo.io

 

都道府県別20-50代の男余り率ランキング」も掲出しています。あわせて男余り全国MAPも作りました。MAPにすると一目瞭然の事実が浮き彫りになります。

男が余っているということは、女子は結婚しやすいということです。結婚したい女子は、ぜひこのMAPを参考に男余り率の高い県に引っ越ししてください。

なんで男が余るのかについては、本文には一要因ほ書いていますが、もうひとつの要因は時間差一夫多妻制です。再婚を繰り返す男が未婚女性と結婚しまくるという状態があるからです。

そちらについてはこっちの記事で書きました。toyokeizai.net

ちなみに以前、20-30代のランキングを発表した際には、日テレ月曜から夜ふかしでも取り上げられました。

そのときのブログはこちら

wildriverpeace.hatenablog.jp

 

ぜひご覧ください! 

パパとママへ。生まれ変わっても、私のことを見つけてね。

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小児科医の先生がご自身の経験の中で出会った18個の物語を記した「君がここにいるということ」という本があります。その中のひとつ、白血病と戦った少女とその母親とのお話を抜粋して紹介します。 

 

君がここにいるということ:小児科医と子どもたちの18の物語
君がここにいるということ:小児科医と子どもたちの18の物語 緒方 高司

草思社 2015-07-16
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その先生と4歳の由香子ちゃんとの出会いは、彼女が白血病の疑いありと診断されて検査のため大学病院に来院したときだった。由香子ちゃんは、目がくりくりとした、運動が大好きな女の子だった。

検査といっても、骨髄を抜き取るために背骨に太い針を刺さなければならない。大人でも痛い。当然、由香子ちゃんも泣いて暴れて、激しく嫌がった。

その時、由香子ちゃんのお母さんが彼女を説得したのだが、それは、自分も同じ検査をするからがんばって、というものだった。

お母さんは先生にこう言った。

「由香子にする骨髄穿刺検査を私にもしてください。そして、私がその検査をがんばる姿を見たら、由香子も検査をがんばる、と約束させました。お願いします」

そう言われても病人でない人に針を刺すことは傷害罪になるからできないという医者に対して、お母さんも頑として譲らない。

「私は、由香子がこれから病気と長い闘いをしていかなければならないと覚悟しています。私も、由香子と一緒に、病気と闘いたいのです。そのためには、由香子が引き受けなければならない痛みや辛さを私もできるだけ共有したいのです。気持ちだけでなくて、五感すべてを使って、共有したいのです。由香子が苦しくてご飯を食べられないときは、私も食べません。由香子が足を切らなければならないときは、私も足を切り落とします。そして、神様に由香子を助けてもらうのです。神様に頼んで、私の寿命を由香子に分け与えてもらうのです」

このお母さんの覚悟の言葉に医者たちは言葉を失ったという。そのやりとりを聞いていた由香子ちゃんは、こういいます。

「ママ、大丈夫だよ! 由香子、検査がんばるよ! ひとりでがんばれるよ!だから、ママはそんなことをしなくていいよ」

検査の間、由香子ちゃんは痛みに涙を流していたが、廊下で待っている母親に泣き声を聞かれないように、と必死で声を嚙み殺していたそうだ。

 

検査の結果、悪性ではないことがわかり、数年かけて入退院を繰り返しながら抗がん剤治療をすることになった。それでも当時は順調に治癒に向かっていた。

しかし、3年後、由香子ちゃんが7歳の時、また白血病が再発した。

再入院してきた彼女は、相変わらず明るくて楽しい子であった。それどころか、お姉さんになった由香子ちゃんは、痛い検査の後で泣いている5歳の男の子を慰めるなど自分よりも小さな子のお世話を自ら進んでしてくれた。

病院内での七夕の願い事。普通の子は「早く退院できますように」とか「早く病気が治りますように」という願いを書くものだ。しかし、由香子ちゃんの願いは「パパとママとチコちゃん(飼っている犬の名前)が病気になりませんように」というものだった。

抗がん剤で治療すると髪の毛が抜けるが、その時も「由香子の髪の毛がなくなったら、ママも髪の毛を切って『ぼうず』にしちゃうんじゃないか心配なの。ママの長いきれいな髪の毛、由香子は大好きだから」と自分のことより母親のことを心配する、そんな子だった。

それから三度目の入院。由香子ちゃんは9歳、小学校3年生になっていた。病状は芳しくなく、50%の確率だが骨髄移植の手術に賭けることになった。

10月由香子ちゃんは入院してきた。骨髄移植の準備のために無菌室に入れられ、お母さんともガラス越しにしか会話ができない。そんな時、由香子ちゃんはこんなことを母親に告げた。

「ママ、私がいなくなっても、ひな祭りの日には、おひな様を飾ってね」

まだ10月なのに、である。当然母親は慌てる。まるで自分の死期を悟ったかのような娘の言葉だったからだ。

「由香子、おかしなこと言わないで! 来年のひな祭りは、おうちで一緒にひな祭りしましょ!」

「そうだね。でも、ママ。約束だよ」

 

その後由香子ちゃんは、一度も退院することなく、3ヵ月後に遂に力尽きてしまいます。

 

母親はしばらく喪失感で何もする気が起きなかった。けれど3月になって、母親は由香子ちゃんとの約束をふと思い出した。

「私がいなくなっても、ひな祭りの日には、おひな様を飾ってね」

由香子ちゃんは確かにそう言っていた。正直、亡くなった我が子のためにひな人形を飾るのは気が重い。しかし、由香子ちゃんとの最後の約束である。母親はひな人形を飾るため、人形の入った箱を開けた。

お内裏様の人形の胸に、「パパ」という文字を刺繡した布が巻かれてあった。同じく、おひな様には「ママ」と刺繡した布。そして、三人官女のうちのひとりに、「由香子」と刺繡した布が巻きつけてあった。

 

そして、箱の中には手紙が入っていた。こんな文だった。

 

 

パパとママへ

今までありがとう
パパとママの子に生まれてこられて、しあわせでした
わたしはいなくなっちゃったけど、しんぱいしないで
このおひなさまみたいに、おおぜいのお友だちにかこまれて
楽しくすごしています
だから、悲しまないでね
こんど生まれ変わったら、お医者さんになりたいな
そのときは、パパ、ママ
わたしを見つけてね

 

 

 

僕は、これをそば屋でソバをすすりながら読んでいたのですが、人目気にすることなく、ボロボロ涙を落として号泣してしまいました。

僕らは毎日当たり前のように生きているつもりになっていますが、由香子ちゃんが生きた9年間のような密度の濃い人生を送っているだろうか、由香子ちゃんのように他人を思いやれる気持ちと行動をしているだろうか。そんなことを考えました。

もっといえば、「生きるとはどういうことか」。そういうことをこの本のこの物語を読んで考えさせられたし、由香子ちゃんから「今この時の一日、一瞬を大事に生きることの意味」を教えてもらったような気がします。

 

 

ぜひご一読ください。

君がここにいるということ:小児科医と子どもたちの18の物語

 

フジテレビ「ノンストップ! 」に出ました!

今朝のフジテレビ「ノンストップ!」にちょこっとだけ出演しました。この番組に出るのは2回目です。ありがとうございます。

夫婦のソロ行動について語ってます、独身なのにw

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おひとりさま行動は、独身者だけではなく既婚者にも拡大しているというお話をしました。

これは共働きの子なし夫婦が増えていることが影響しています。消費の形態はますますソロ寄りに変化しています。

まあ、夫婦だからっていつもべったりである必要はありませんからね。

こういう意見もありました。

 

夫婦の5割が別々で旅行に行けると思ってるのも面白いです。

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でも、これは決して意外な結果ではないです。ランチのぼっち飯希望はもはや8割ですし、ソロ活動派はもはやマイノリティではありません。

ある特定の月に離婚が集中している事実。実に日本人らしい。

日経COMEMOコラムの5回目です!

大多数の日本人が知らない日本人のこと。
明治初期まで、日本の離婚率は世界トップクラスでした。日本人は、世界的に見ても離婚再婚を繰り返す民族だったんです。
最近離婚が増えているという話も聞きますが、それはむしろ日本人としての原点回帰なのかもしれません。

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三行半(みくだりはん)という言葉があります。

この三行半は、夫が妻に対して一方的に突き付けるものだと思っていませんか?それは大きな誤解です。むしろ妻の方から「寄こせ! 」と旦那に要請した例も多いんです。そんな知っているようで知らない日本人の本質について書いています。

離婚は結婚5年以内が多かったのですが、最近は、結婚20年以上の熟年離婚も増えています。月別にどの月がもっとも離婚が多いか、についてのデータものせています。ある特定の月にものすごく偏りがあって面白いです。その偏りがまた日本人っぽい気がします。

ぜひご覧ください!

comemo.io

 

 

 

あと…これも誤解している人多いんですが

離婚が少ない=夫婦が互いに愛し合ってるということではない。家父長制度における妻は経済的自立を奪われていたわけで、離婚するという選択肢はなかった。つまり個人として経済的自立が進むと離婚は多くなるんです。だから男女とも銘々稼ぎ(共働き)していた江戸時代までの日本は離婚が多いし、アメリカも多い。

芸能人同士の結婚で離婚が多いのもそれで十分説明がつく。だって互いに相手に経済的に依存する必要がないわけだから。

そして、ペルーやチリといった南米の離婚率が低いのもこの国は子どもは母親が育てるという専業主婦率が高いからなんです。

なるほど。いろんなところで合点がいきます。

 

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仕事も家事・育児もやらなきゃいけない「働く専業主婦」を生み出す構造

東洋経済オンラインの連載「ソロモンの時代」29回目が公開されました。

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今回のテーマは「結婚生活の理想は専業主婦か共働きか?」。

toyokeizai.net

 

ぜひご一読ください! 

 

調査したところ、未婚と既婚、男と女で理想の結婚生活形態が正反対という興味深い結果が出ました。女性活躍社会とかイクメンとか共働き・共家事・共育児とかいう号令は大変結構ですが、現実は厳しい。

「未婚女性の専業主婦志向が実現困難な理由」というタイトルになってますが、どっちかというと「結婚の現実がいびつな専業主婦形態を作り出した」という構造的な問題に焦点をあてています。

自分でタイトルをつけるなら(※あ、これ知らない人多いと思いますが、こういう連載のタイトルとか、小見出しというものは筆者はノータッチなんですよ。編集部がつけるんです。出版された本のタイトルもよほどの大物ではない限り、基本タイトルに著者はタッチできないものなんです)…

「働く専業主婦」を生み出した結婚経済の闇

というところでしょうか。

結婚とは生活であり、経済そのものです。愛だのという概念は立派ですが、そんなものだけでは飢え死にします。

結婚した当初共働きだったとしても、出産のタイミングとともに妻が離職するパターンが非常に多い。子を産んでも正規のままずっと働き続けられる人もいますが、大体2割くらいです。それ以外は、子どもが小さいうちは専業主婦になります。

しかし、いつまでもそのままで生活が続くわけがありません(旦那が高収入なら別ですが)。家族の経済を安定させるためには、結局働かなきゃいけない。

ツイッターでもこんなつぶやきがありました。

 

とはいえ、一度正社員はやめるとそうそういい仕事はない。たとえあっても、子どもがまだ小さいうちはフルタイムで働くのも無理がある。

結果、妻ができるのは非正規、パートのような仕事になります。パートとはいえ、仕事は仕事。でも旦那的にはそれは仕事とは見なされなくて、主婦業は相変わらず妻の仕事扱いです。

そうして、働きながらワンオペ育児をする妻という「働く専業主婦」を多数生み出していくことになるんです。

ぜひご一読ください。

 

今回の記事(本記事およびヤフーニュース)にもたくさんのコメントが寄せられました。

新婚当初、共働きで顔を付き合わせたのはひと月の間に2回程。夫はオフの日は趣味のスポーツクラブやサークル三昧で家事は全くノータッチ。妊娠して体調が悪くなってからも一向に変化せず、家事と仕事の両立、それに子育ては無理だと思って退職しました。こうやって、仕方なく家庭に入る人は多いと思います。収入が多い程、保育料も高いし、でも、シッターを毎日頼む事が出来る人なんて一握りでしょう。共働きだと外食やお惣菜が増えて出費もかさみます。保育園に預ける時には毎回泣かれて、熱が出たら解熱剤の座薬を入れて預けに行く。子育てしながら共働きは、親に頼れないなら、かなりしんどいです。夫がどこまで家事と子育てに参加するかが、家庭を維持する上で非常に重要になります。家庭的であるか見抜く事も必要ですね。入籍前に同棲も良いのではないでしょうか。また、何度も話し合いが必要。国はどこまで本気で子育て支援に乗り出すでしょうかね。

この人なんかも、子どもをちゃんと育てようとすると、結局専業主婦にならざるを得ない状況なんですよね。

この漫画の主婦のように…。

mama-9jin.com

 

結婚した当初4割にも満たない専業主婦世帯が子どもが生まれた途端6割に増えるという事実(2015国勢調査より)があって、それってもはや夫婦の自己責任では解決しないんじゃないかと思います。

 

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他のコメントには「完全専業主婦」を敵視するような心無いコメントも見られた。しかもそれが同じ女性だ。つまり彼女たち「働く専業主婦」からしてみれば、「完全専業主婦」が許せないのだ

専業主婦になりたかった人もなれなかった人も、なりたくなかった人もならざるを得なかった人も人それぞれ。結婚というのはやっぱり現実の生活なんだとつくづく思います。

 

あとこんなうれしいコメントもありました。

限られたアンケートの結果を納得感のある論理で分析し、クリアな結論付けができた秀逸なレポートだと思います。

本文を読みもせず、また、読んでも読解力がないために筋違いなコメントする方が多い中、こういう評価は非常に励みになります。

「みんなと一緒」じゃないと異常扱いする同調圧力こそが異常。

日経COMEMOのコラム、4回目を公開しました。

 

comemo.io

 

以前も孤独担当大臣については書きましたが、それをさらに突き詰めて、日本が抱えているのは孤独ではなく孤立なのだという話をしています。

どうしても孤独というと「おっさん」に話が向きがちなんですが、おっさんの孤独はあまり気にしなくてもいいかな、というか、おっさんなんだから甘えないで自分でなんとかしろ、と。

なんか最近、おっさん=孤独という理屈でディスりたがる人が多い気がする。これたぶんおっさんをディスっても炎上とかしないからだろうな。かわいそうに、おっさんたち。

まあ、それはともかく…

孤独を一人暮らしとか見かけの状態が問題だととらえるのはやめるべきです。

 

それこそ本質を見誤るし、それはやがて見かけから発展したイジメや偏見・差別につながります。

 

「物理的孤独」より心理的・社会的孤立感」の方が問題なんです。家族がいても、職場や学校にいても、そうした心理的孤立を抱えている人はたくさんいます。むしろ妻も子もいるけど家に居場所のない父親の方がよっぽど孤立感を味わっているんじゃないですか?いじめにあいながら、先生にも親にも救いを得られない子どもだって孤立感を感じているかもしれない。会社に属していながら、何のやりがいも与えられず腐っているサラリーマンも同様です。母子家庭で貧困にあえでいる母親だって心理的にも社会的にも孤立してます。

その中でも特に、子どもの孤立について我々大人はもっと真剣に考えるべきだと思います。

世界の中で、日本の子どもたちが感じてる孤独感・孤立感がどれくらいあるかご存知ですか?やや古いですが、2003年OECDの調査によれば、異常なくらい日本だけ突出しています。3割が孤独感を感じているわけです。

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3割全員が孤児ではない。家族もいるし、学校も行っていることでしょう。

にも関わらず、こんなに多くの子どもたちが心理的に孤立感を抱えていることをもっと大人たちは知るべきだし、そこに向き合うべきです。

こういうのについての対策となると、国とか自治体はすぐ「子どもたちを一人しない居場所を作るべきだ」という箱型発想になります。

果たしてそれで解決するでしょうか?

だったら、なんでそもそもこの子どもたちは孤独感を感じているの?

それこそ所属=安心という幻想にいまだに多くの人が取りつかれているからです。

 

かつては、どこかに所属していれば、それだけで安心だった社会でした。地域、家族、職場という共同体が安心を保障してくれていたわけです。しかし、もはや所属が安心を保障してくれる社会ではありません。むしろ家族がいるからこそ、学校や職場という集団の中にいるからこそ孤立感や疎外感を感じてしまう人も多い。

対応すべきなのは、状態として群れの中に押し込むことではなく、彼らの心の中にある空洞を埋めてあげることです。人によっては、一人の方が安心する子どもだっているんです。すべての子どもを同じ枠にはめるのではなく、個人を見てあげる姿勢が必要。

つまり、「みんなと仲良くしなさい」という押し付けではなく、「一人でも没頭できる何かを見つけられたらそれでいい」と認めてあげることなんじゃないかなあ。

とかく学校は「みんなと一緒」を絶対正義としがち。「みんなと一緒」になれない子どもは異常扱い。そんなわけはない。孤独でいたいことは病気じゃないし、個性や性格の話。

「みんなと一緒じゃなくてもいいんだよ」という承認が第一に必要なんです。

 

そんなことを考えて書いた記事です。

ぜひご一読ください→孤独担当大臣なんて不要。孤独=悪という考え方こそ見直すべき。

時代や世代で、不良少年も草食男子も増えたり減ったりしない!

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日本から不良少年が激減した?

そんなことを恥ずかしげもなくメディア上で書いている人がいたので、事実を書いておきましょう。たぶん、その御仁は、警察の発表した警察庁の「少年の補導および保護の概況」という資料などを斜め読みして、わかったつもりになってしまったんでしょう。仮にも研究員とかいう肩書ならば、データは単体で表層的に見るのではなく、複層的に見たうえで解釈してもらいたいものです。

警察庁の資料はこれです。

まず、少年の刑法犯の長期推移。

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確かに下がってますね~。

続いて、少年触法犯の推移。触法というのは簡単に言えば補導された少年ということ。

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こちらも減ってます。

いずれも戦後一番多かったのが1980年代の頭です。この頃何があったか覚えてますか?

これです。

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1982年に出版され、300万部も売れました。その後ドラマや映画などになりまくった不良少女のお話です。俳優で、現在はいいパパ役を演じている宇梶剛士が、暴走族ブラックエンペラーの7代目総長をやっていた頃です。横浜銀蝿というバンドが1980年にデビューして大人気。ドラマ「スクール☆ウォーズ」の原作となったノンフィクション本が出版されたのも1981年です。漫画『ビー・バップ・ハイスクール』の連載開始は1983年。

そういうエピソードも聞くと、「ああ、なるほど。あの当時は不良が多かったんだねえ」と納得してしまうでしょう。

当時は、不良は不良らしいファッションだったし、わかりやすかった。

不良少年の数が多かったのはその通りですが、そもそもガキの数も多かった。第二次ベビーブーム以降の人口増でこの頃学校のクラス人数も滅茶苦茶多かった。絶対数が多けりゃいろいろあるさ。

でも、暴走族ってもうほとんど見ないよね。

そう思います?

同じ警察庁の資料のこんなのがあります。暴走族における少年の割合です。

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ほぼ変わっていません。減ったのは成人の暴走族であって、少年の暴走族の数は10年以上前と同じなんです。意外じゃないですか?僕は意外でした。最近、ゴッドファーザーのクラクション聞いたことないし…。

それと、少年の刑法犯、触法犯の数と人口比が減っているのはその通りですが、では成人の刑法犯の人口比と比べてみましょう。

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減ったとはいえ、それで成人の犯罪率とやっと同レベルになっただけです。というか、刑法犯に関して言えば、今でさえ成人の倍以上います。そもそも多すぎたともいえるわけで、少年の部分だけを取り出して減ったと喜べる話じゃないんです。

さらに、犯罪種別で見てください。

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窃盗犯とかはここ10年減ってもいないし、粗暴犯や凶悪犯はむしろ増えています。万引きとか自転車泥棒とか小さい犯罪は減っているんですが、こうした大きいものはたいして変わっていないわけです。

殺人と自転車泥棒も全体の犯行数としては1件ですが、決して同じものじゃない。

要は、少年犯罪が時代とともに減っているわけじゃないってことですよ。わかりやすい見た目の不良がいなくなったからといって、本質的な意味もの不良がいなくなったわけじゃない。大体、ビーバップが流行れば不良じゃなくてもああいう格好はするし、ラッパーが流行ればラッパーじゃなくても恰好を真似るのと一緒。かわいいもんですよ。

北九州の成人式の彼らなんか、みんないい子じゃない(知らんけど)。

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本当にやべえ奴は、悪目立ちしない普通の恰好をしているもんだ。

 

そもそもの人口が減っているから犯罪件数が減っているだけであって、犯罪をやる比率は変わっていないし、凶悪犯は増えているというのが事実です。

データを読むってのはこういうことを言います。

 

そして、実はもうひとつ傾向があって、知能犯が増えているんです。

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いわゆる振り込め詐欺もここに該当しますが、今後仮想通貨の流通なんかと連動してこういった犯罪も増えていくでしょう。

よく考えてね。

バイクがなかった時代に暴走族はなかった。バイクが少年たちのオモチャになったから、暴走族という遊びが生まれたにすぎない。スマホやネットの普及により、これからはそこが少年犯罪のフィールドになるんです。

 

時代が変わって少年犯罪が減ったとか言わないように。恥ずかしいから。

もっと最悪なのは、「スマホを与えられたから、少年たちが不良じゃなくなった」とかの論説は稚拙すぎて呆れるから。スマホが新たな不良少年を生み出すのです。

それから逆もね。最近の少年少女は親との仲が良く、反抗しなくなったとかいう人するんだけど、それも大嘘。家庭内暴力数は過去最高に増えている。そして、昔だっさて親と仲のいい息子・娘はいた。

変わらないんだよ。時代とか世代なんかじゃ! 不良も減っていなければ、草食も増えていない。

 

こちらの記事もぜひどうぞ! toyokeizai.net