ソロで生きる力@荒川和久

独身研究家として、テレビや新聞・雑誌などのメディアに出演しています。著書「結婚滅亡」「ソロエコノミーの襲来」「超ソロ社会」「結婚しない男たち」など。東洋経済オンライン等でコラム執筆しています。執筆・取材・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージからお願いします。https://www.facebook.com/profile.php?id=100008895735359

最新の生涯未婚率から考察する、ソロ社会化進行とその適応について

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先日、2015年の国勢調査抽出速報集計結果が発表されました。

それによると、生涯未婚率は、男性22.8%、女性13.3%でした。ちなみに、日経新聞では女性の数値が13.4になっていますが、それは小数点第二位を無視しているためで、厳密にはこちらの数字が正しいです。いずれにせよ、これは男女とも過去最高値です。

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この生涯未婚率、前回2010年と比較すると、男女とも2.6ポイント上昇しましたが、推計値と比べて1.5ポイントほど下がっています

年代別に見ると、20代と40代以上の未婚率は上昇しています。特に、45歳以上が顕著。しかも、40歳以上の女性の未婚率上昇幅は男性よりも大きくなっていますね。

対して、男女とも30代未婚率が減少しています。特に30-34歳。平均初婚年齢は前回調査と変わらないので、30前後での結婚数が増えたということでしょうか。

これをどう見るかですよね。

もともとの推計より生涯未婚率が下がったとはいえ、あまり安心できません。これは、あくまで45-54歳の未婚率がそれほどあがらなかったというだけです。逆に言えば、40歳過ぎでの婚姻率が増えた、つまり、晩婚化に拍車がかかったという判断もできますから。

年代別未婚率で見れば、30代のみ確かに未婚率は減少しています。とはいえ、20代と40代の未婚率は進行している。これはどういうことか。20代のうちはより結婚を考えなくなったということだし、40代過ぎると特に女性は、もう結婚を諦める方向にシフトしているということです。

個人的に、これは、よりソロ社会化が進んでいく現れではないかと考えます。勿論、すべての人が結婚しないわけではないし、結婚する人は人口の半分はいる。ただ、残りの半分は独身者となる。これは間違いない。20代及び40代以上の未婚率が上昇する一方で、70歳以上は夫に先立たれた高齢女性のソロ生活者だらけになっていく。昨今の離婚率の上昇や全体の晩婚化も加味すれば、数としての独身者数もさることながら、国民の独身者時間は圧倒的に多くなります。つまり、国民の生活時間の中で「ソロ」でいる時間というのが圧倒的に多くなるわけです。人の数だけで見てしまってはいけません。人間一人の一生の中で「ソロ」でいる時間の比率が高くなれば、国民全体のソロ生活時間が増えるということです。ここが大きなポイントなのに、ここを指摘する人は誰もいませんでした。

そうなれば間違いなく、今の世帯や家族ありきの商品やサービスだけでは限界にきます。百貨店からスーパーに、そしてコンビニに流通の主役が移行してきたのと同様、消費の世界でも大きな転換期が来る。流通業だけではありません。現状は、家族ありきのサービスに偏重している金融や保険もそうです。

高齢化もそうなんですが、このソロ社会化というのも世界に先駆けて日本が直面する社会的課題なんです。

だからといって、政府や社会制度のせいだけにするのはもうやめましょう。そんなことしても何の意味もないし、何の解決にもなりません。制度があるからといってこのソロ社会化の波が止められるわけではないということにいい加減気付くべきです。「未婚化は貧困のせいだ」とか、根も葉もないことを言うのもやめるべきです。これについては、以前「金が無いから結婚しないって本当か?」という記事に書いてありますのでご参照ください。

wildriverpeace.hatenablog.jp

生活者個人の意識が変われば、アウトプットとしての行動と事実が変わる。そのひとつにソロ社会化があります。それが避けられないのであれば、我々はそれにいかに適応していくかを考えるべきです。

大事なのはできもしない復古や変革を叫ぶのではなく、来るべき未来にどう適応するかを考えることです。アメリカ含む西欧諸国も日本に続いてソロ社会化が進行します。最大の男あまり国家である中国も早晩そういう時代が来ます。

勘違いしないでほしいのは、ソロ社会は孤独社会ではないということです。ネットが進歩した現代から未来にかけて、我々は常に誰かとつながることが可能です。完全なる孤立の方が困難なんです。リアルに誰かと婚姻関係となって一緒に住むだけではなく、ソロで生きていきながら多様なコミュニティとの関係性の中で生きていく未来が来ます。

一心同体のフルタイムパートナーではなく、互いに自立するデュアルタイムパートナーという考え方。ヒューマンパートナーではなく、人口知能パートナーという考え方。親が子を育てるだけではなく、社会も子を育てるという考え方。いろいろな可能性が考えられます。

Going SOLO。そろそろ真剣に考えるべき時なんです。

※生涯未婚率はあくまで抽出値による速報なので確定値ではありません。