ソロで生きる力@荒川和久

独身研究家として、テレビや新聞・雑誌などのメディアに出演しています。著書「結婚滅亡」「ソロエコノミーの襲来」「超ソロ社会」「結婚しない男たち」など。東洋経済オンライン等でコラム執筆しています。執筆・取材・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージからお願いします。https://www.facebook.com/profile.php?id=100008895735359

「独身の交際相手なし、過去最高」の煽りニュースの大嘘。

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15日に公表された出生動向基本調査に基づいて、"「独身の交際相手なし」過去最高、男性7割 女性も6割"というニュースをどこもかしこも伝えている。ヤフーニュースでも日経新聞でも日本テレビでもTBSでも…。

このニュースの「過去最低」という言葉につられてかで、ネットでは、「若者の草食・絶食化」とか「日本が終わる」とかつぶやかれています。毎度お馴染の「近頃の若いもんは…」も当然ある。

もうね、ホントやめてほしい。恣意的にデータを使うのは!あと、世間の人たちは本当に過去のデータとか昔のことを知らなすぎるよ!

どうせ、そんなんだから江戸時代に男が今より余っていて、女性の倍男がいたとか、有配偶率は今より低かったとか、離婚率は40%超えていたとかも知らないんだろうなあ。これだけ無知だと、国やマスコミの情報操作に簡単にのせられるわ、と背筋が寒くなりました。

笑っちゃうのは、どこどこ会社のCEOだか知らないけど、ある程度社会的地位がある人でさえ「これからの日本が心配だ」とか言いだす始末。年のいったジジイが「わしの若いころは、ちゃんと女の子にアプローチしたもんじゃ」とか、確認できないのをいいこと「昔は俺すごかった伝説」始めたり…。

昔の男子は男らしく女性を口説いていたとでも言いたいんだろうけど、断言できる。

それ全くの嘘だろ!

 

出生動向調査では、18~34歳の独身者に対する調査なんですが、交際相手なしという数字をそのまま受け取ると大きな勘違いを引き起こす。それについては以前以下の記事でも書きましたが、再度。

wildriverpeace.hatenablog.jp

 

まず、「交際」というものの定義がおかしい。

そもそもの調査としては、「婚約者がいる」「恋人がいる」「異性の友達がいる」「交際相手なし」「不詳」という分類。ですが、この交際相手に「異性の友達」をなぜ入れる?という話ですよ。

この調査は、出生動向調査の前の1982年第8次出産力調査から始まったと認識しているが(詳しく調べてないので違っていたらごめんなさい)、その当時からこの選択肢は始まっているわけです。

「異性の友達」ってさ…それって付き合っていると言えるの?正確をきすなら、「婚約者」「恋人」のふたつが妥当でしょう。

というわけで、上記ふたつでグラフを作ってみた。

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大騒ぎしているのは2015年の数字ね。交際相手がいる率、男性21.3%、女性30.2%。ニュースで報道されているのは、これに「異性の友達」を加えているので、男性7割、女性6割が交際相手なしといわれているわけです。

確かに、グラフ上では2005年から下降線をたどっていますが、1982年と1987年の数字を見てください。

たいして変わらないんですよ。

1982-1987年ってどんな時期だったかというと、ホイチョイの映画「私をスキーに連れってって(原田知世主演)」波の数だけ抱きしめて中山美穂主演)」の舞台となった時代です。田中康夫「なんとくなく、クリスタル」が話題になり、ハマトラファッションが流行って、陸サーファーが生まれ、大学生はテニスやシーズンスポーツのサークルに入り、合コンとダンに明け暮れた時代。当時の若者は新人類と呼ばれました。まさに僕がその年代ですからよ~く知ってます。

バブルへと一直線に突き進んだ時代でもあり、世の中全体が浮ついていた時代ですよ。

そんな時代でさえ、婚約者や恋人がいた率なんてものは、20-30%しかいなかったんです。よって、言い方変えれば、今はそのバブル前夜の浮ついた時代と同じ水準に戻っただけ。

「俺が若いころは…」とか威張ってるおっさんだって、当時はたった2-3割しか彼女いなかったわけで、大体が嘘ついてますよ。

これ面白いのは、「草食男子」という言葉が生まれたのは2006年なんですが、その前年2005年男の交際率がMAXだったってこと。肉食男子比率が一番多かったんですよ。※ちなみに、深澤真紀さんが定義して草食男子は違う意味だったことは理解しています。

ちなみに、性体験有の率も減っているとニュースでは言ってますが、2015年男性の性体験有率は54%、1987年の53%より上です。女性に至っては、2015年50%に対して1987年たったの30%でした。なんと65%が処女だったわけです。18-34歳の総計ですよ!

彼女・彼氏いる率も30年前とほぼ変わらないし、性体験率も男は変わらない、女性は少し奔放になった…程度の話です。

各種新聞やテレビが大騒ぎして、「えらいこっちゃ」なんて言う話じゃないですよ、マジで。

 

「いやいや、そうは言ってもこの非婚化時代、交際しなければ結婚もないわけで、これはゆゆしき問題だ」っていうやつ。

少子化の前に婚活をもっと推し進めていかないと大変なことになるぞ」ってやつ。

 

はあ?

 

お言葉をかえすようですが、1987年から2005年にかけては男女とも交際率はあがっていますよね。その時期にいったい何がありました?

生涯未婚率の急上昇です。

おかしくないですか?

交際率があがれば婚姻率があがるんでしょ?じゃあ、なんで過去最高の婚姻率を出した2000年前半期に生涯未婚率がかつてないほどあがったんですかい?

まあ、生涯未婚率は45-54歳の平均未婚率だから、18-34歳の交際率と比較するのはおかしいと言われるかもしれません。もっともです。だから、25-34歳の未婚率で比較してみましたよ。

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あれ?

やっぱりおかしくないですか?交際率があがればあがるほど、未婚率があがりまくってますよ。しかも、2005年から2015年にかけて交際率が下降した途端、未婚率は横ばいになりました。

どういうこと?

交際率と未婚率に関係なんかないんですよ。

交際促進、要するに恋愛なんて非婚化解消にならないどころか、自由な恋愛機会があればあるほど人は結婚しなくなるんじゃないの?

じゃないと説明つかない。なぜ、交際率がさがったら未婚率があがらなくなったのか、が。

時代の変遷で、男と女が「ほれたはれた」をしなくなるわけじゃない。いつの時代もヤリチンはヤリチンだし、ビッチはビッチ。そして、大体どの時代でもモテル奴というのは男も女も3割まで。クラス30人いたら、大体9人くらいでしょ?付き合っていたやつなんて。

そんなもんです。

 

とにかく、こういうデータが出るだびに「昔はよかった」「俺の若いころは情熱的だった」「イマドキの若者は恋愛もできないのか」というオヤジたちとおばはんたちに言いたい。

 

変わんねーよ!

 

僕は思うんですよ。日本人っていうのは、もともと「恋愛」と「結婚」と「セックス」というものを3つ分けてとらえていた民族なんじゃないかって。そのあたりについてはまたおいおい書きます。

 

newspicks.com