ソロで生きる力@荒川和久

独身研究家として、テレビや新聞・雑誌などのメディアに出演しています。著書「結婚滅亡」「ソロエコノミーの襲来」「超ソロ社会」「結婚しない男たち」など。東洋経済オンライン等でコラム執筆しています。執筆・取材・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージからお願いします。https://www.facebook.com/profile.php?id=100008895735359

3.11に思うこと。大川小学校の悲劇から。

今日は3月11日。あの未曽有の大災害となった東日本大震災の日からちょうど6年目です。

テレビでもネットでもいろいろな形で、あの日を忘れないという主旨でこの話題が取り上げられていました。

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個人的に、取り上げたいのは以下の記事です。

あの日、津波で亡くなった娘へ 父が贈るあたたかく、少しふしぎな手紙

www.buzzfeed.com

 

あの石巻市立大川小学校で亡くなった鈴木真衣ちゃん(当時小学6年、12歳)のお父さん鈴木典行さん(52歳)が、娘にあてて書いた手紙です。

 

真衣、いまどこにいるの?もう5年半も帰って来ないから心配しています。真衣のところに行きたいけど、簡単には行けそうも無いので手紙書きます。たまにさ〜、真衣が夢に出てくるんだけど、六年生のままなんだよね。ちっちゃくて、丸顔で、ちょっと出っ歯で。もう18才だよねー。あと半年で高校卒業なのに見た目は小学生かい。

 

こんな書き出しで始まる彼の手紙は、涙なくしては読めません。

ぜひ、多くの人に見ていただきたいと思います。

 

 

 

手紙ってなんだろう?と考えました。

もちろん、電話やメールがなかった時代、手紙は「伝える」ための重要なツールでした。でも、手紙って「伝える」だけのものじゃない。

現代だって、電話やメールで済ませられることを、わざわざ手紙にする場合だって存在する。

 

「伝える」以外の、手紙を書くという、もうひとつの役割。それは、手紙を書く作業を通して自分と向き合うこと。

この場合、もう真衣ちゃんは亡くなってしまっている。でも、真衣ちゃんにあてた手紙を書くということで、お父さんは真衣ちゃんと対話ができたってことです。

拙著「超ソロ社会」にも書きましたが、人は人と相対することで、その人ごとの自分自身が生まれます。Aさんと相対すれれば、Aさんと自分との関係性から生まれた「自分」が生まれる。Aさんが好きだな~って思うのは、Aさん本人が好きというより、Aさんと一緒にいることで生まれた「自分自身」が好きっていう感覚なんです。

このお父さんも、手紙を書く作業で自分と向き合えば、自分の中に存在する真衣ちゃんと相対した自分が出てきたんだと思います。

現実の世界で、真衣ちゃんと向き合うことはもうできないけれど、お父さんの中にはずっと真衣ちゃんと向き合った自分自身が生き続けるのだと思います。

だからこそ、インタビューでは出てこない言葉が書けたのでしょう。

 

 

それから、大川小学校の先生たちの行動を非難する声がネット上に見られますが、先生たちを非難しても、亡くなった人たちが戻ってくるわけじゃない。大切なのは、あの日集団行動をとったことが犠牲者を生んだ原因であることを認め、ああいう場合は、ひとりひとりがバラバラに逃げるという教訓としてもっとたくさんの人たちに知ってもらうことだと思います。

実際、グラウンドに並ぼうとする小学生たちの点呼も取らずに「バラバラに逃げろ!」と高台へ走らせた岩手県釜石市内の小中学校は、99.8%という生存率だした。

三陸の人たちは、「津波てんでんこ」というようです。「津波が来たら、各々、一人で逃げてください」という意味です。

 

震災の悲惨さや犠牲者を悲しむことだけではなく、こうした「教訓」を未来に残すということ。それこそが、震災を忘れないということの意義のひとつではないでしょうか。