ソロで生きる力@荒川和久

来年1月に新刊「超ソロ社会-独身大国日本の衝撃」が出ます。「結婚しない男たち」とあわせてよろしくお願いします。独身研究の第一人者としてテレビ・ラジオたまに出ます。東洋経済オンライン、読売新聞オンライン他コラム等執筆しています。執筆・取材・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージからお願いします。https://www.facebook.com/profile.php?id=100008895735359

「エモい」は若者言葉ではない?広めたのは落合陽一さん。エモ消費時代が来る!

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こんな記事が8/14日経MJに!

 

 

 なんか「ヤバい」に続く若者言葉として「エモい」を取り上げているようですが…今年1月に出した拙著「超ソロ社会」の中でも「エモい」については説明しているし、私がまさに日経MJに1月16日に寄稿したものでもこれからの消費の形としての「エモ消費」と名付けて説明しています。

 

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そもそも、「エモい」という言葉は、ネットスラングとしてすでに10年以上も前から使われています。「エモ」とは「エモーショナル」の略だが、その定義には諸説ある。

もともとは、音楽のジャンルの一つである「イーモウ(Emo)」からきています。メロディアスで哀愁的な音楽性と切ない心情を吐露するような歌詞が特徴的なロック・ミュージックを指す。それが、「なんとなく寂しい気持ちや悲しい気持ちをあらわす」コギャル語として使われるようになったという説もあるが、現在この意味での使用は少ない。一部、「エロい+キモい」の意味で使われる場合もあるようで、その使い方は多様である。基本的には「心が動いた」「心に刺さった」という感動的な意味合いでもあるし、「なんか、うまく説明できないけど良い」という論理的なものを超越した情感でもある。

今回の日経MJの記事を見ていないのですが、出自は正確をきしていただきたいものです。大体「エモい」を日本で一番よく使っているのは、メディアアーティストの落合陽一さんですし、広めたのも彼。

彼によれば、「エモいとは、ロジカルの対極にある、一見ムダなもの。“もののあはれ”や“いとをかし”」だと言う。“いとをかし”とは、枕草子で有名な「非常に興味深い」と訳されるが、その他にも、「美しい」「趣がある」「すばらしい」など多くの意味を持つ奥深い言葉である。なんとなく感じる部分があるのではないだろうか。

ご本人のツイートはこちら。

 

追記)ツイッターのまとめをつくっていただきました!

togetter.com

 

では、この「エモい」という感情がなぜ今後の消費において重要になるのか?

それについては「超ソロ社会」で詳しく説明していますが、一部ご紹介しましょう。

まず前提として知っておくべきなのは、消費の形の推移です。高度経済成長期から現在へ、所有価値としての「モノ消費」から体験価値としての「コト消費」へ、「自己表現のため」の消費から「コミュニケーションのため」の消費へと移行してきた流れは説明するまでもないでしょう。それは同時に、消費の単位が「群」から「個」へ移行する流れとリンクしています。

そして、消費は次の段階に進みつつあります。かつて目的でもあった「モノの所有」や「自己表現」、「コミュニケーションのための体験」はもはや手段と化して、そうした行動の先にある精神的な安定や充足を求めるようになっている。

所有価値でもなければ、体験価値でもない、それらはパーツに過ぎなく、それを通じて得られる「精神価値」に重心が移行していくのです。

以下、本文から抜粋↓

「エモ消費」は大きくは、ふたつの欲求に起因する消費である。
人間として根源的な欲求である「承認欲求「達成欲求がある。「エモ消費」はこのふたつの欲求を満足させることで、幸福感を得るものである。この欲求は、仕事や学業・スポーツなど、消費に絡まない行動でも満足させられるものであるし、恋愛や子育てにおいても感じられるものだ。
世の父親たちが「子どもの笑顔を見ると疲れがふっとぶ」とよく口にするが、これこそ自分の中での社会的承認感と自己達成感を感じられているがゆえの感情だろう。子どもじゃなくとも相手が配偶者の場合でも同じかもしれない。表現が辛辣すぎるかもしれないが、仕事上ではうまくいかず、出世もできず、承認感も達成感を感じられない既婚男性がいたとしよう。それでも彼は家族の笑顔を見たり、大黒柱として家族を支えているという自分自身を認識することで前向きになれるのだ。
しかし、独身であるソロ男・ソロ女はそうした子どもも配偶者も持たない。既婚男女が感じられる「家族によってもたらされる日常的な幸せ」は、どうあがいても物理的に感じようがない。家族を持たないからといって気に病む必要はないのだが、根強い結婚規範や無意識の家族信仰によって、ソロ男・ソロ女は「結婚しない状態の自分」に認知的不協和を感じているのだ。だからこそ「未婚で家族を持たない人間は不幸だ」という理屈を打ち消すために「未婚で家族いないけど十分幸せを感じている」という事実を作りたがる。その代償行為が「承認」や「達成」を満足させる消費行動につながっている。
ちなみに、消費以外にも代償行動はある。それは仕事である。仕事に「承認」と「達成」を感じる人は、デザイナーやライター、映像制作など専門職の特にフリーの人たちに多く見られる。彼らは決してお金のためだけに仕事をしているのではなく、自己の幸せのために仕事をしているのだ。仕事をすることそれ自体が喜びである場合も多い。そういう職業の人たちの生涯未婚率が異常に高いのはそのせいかもしれない。
一方、消費行動において、「承認」と「達成」を得るとはどういうことか。わかりやすい例は、自分の趣味に没頭する人たちである。彼らは、お金や時間の両方を消費することで精神的な充足を得ている「エモ消費」マニアだと言える。
一時期、スマホゲームの課金にはまる人たちが話題になったが、彼らの大部分はソロ男である。課金をすることでゲーム内での戦闘力が高まり、当該コミュニティ内でのヒーローになれる。それは、彼にとって「承認」でもあり「達成」でもあるのだ。また、アイドル商法と揶揄されたが、あれも消費している本人たちは幸せなのだ。同じCDを何枚も購入するなど、興味ない人たちから見たら理解できない行為だろう。だが、そういった消費こそがアイドルたちからの「承認」を得る手段だし、そうやって応援している自分自身を「達成」感で満たしてくれるものなのだ。
ゲームやアイドルだけではなく、日常の消費行動にもそれが言える。
例えば、ソロ女が「癒されたい」という気持ちで甘いものを食べたり(最近はソロ男もこの行動が多く、下手すればソロ女より多くスイーツを買う)、温泉旅行に行ったり、ヨガやサウナに行ったりすることもある主の「承認」のための消費だ。他にも、SNSで「いいね!」されたいという気持ちで自撮りのための服を買ったり、行列のできるレストランに行くことも当てはまる。「頑張った自分にご褒美」という名目で高価なモノを買ったり、高級レストランに行くというご褒美消費もまさに「自分で自分を承認する」ための消費である。
毎日出勤時に同じ自販機で同じ銘柄の缶コーヒーを買うというソロ男もいる。これは、彼にとっては小さな「達成」だ。だからこそ、たまにその銘柄が売り切れていたりすると落ち込む。
(中略)
このように大小はあれど、消費全般に関わってくる欲求であることは間違いない。消費によって「承認」と「達成」という欲求を満たし、ソロ男・ソロ女は幸せを感じる。消費は彼らの幸せに直結する行動であり、家族がいない彼らの生きるモチベーションのひとつかもしれない。
だからこそ、自分の金と時間を消費する対象の選択にはこだわるし、その目は厳しい。機能や性能が優れていることはもちろん前提になるし、それだけではなく、その商品やブランドの成り立ちやバックストーリーまで含めて納得をしなければ承知しない。
上っ面の感動動画広告だけでは彼らは動かないし、世間的に認知度100%の商品であろうと、それだけでは買わない。たとえその企業やブランドが好きだったとしても、何の精神的価値をもたらさないのであれば財布は開かない。好感度が高くても売れない現象などはまさにそれである。そして、以前のように、「皆がそうだから」という集団心理ではなかなか動きにくい。個々人が「承認」と「達成」とをいかに感じられるかどうかがポイントなのである。
それゆえに、一旦納得し、支持すれば長く愛用し続けるのだ。これはもはや単なる買い物の域を超え、人生の伴走者を選ぶのと一緒だ。
ソロ生活者の幸福感が低いというのは定説になっている。それは結婚規範や家族信仰により「家族によってもたらされる幸せが欠如している」という社会的暗示に依るところがあるだろう。だから、彼らはそれを消費によって打ち消そうとするし、消費の対象には、単なる所有や体験だけではない「幸せに直結する精神価値」を求める。価値を認めないものに対しては1円でも1秒でも惜しむが、一度価値を認めれば、惜しみなく金も時間も注ぎ込むことができる。それはもはや論理的に説明しろと言われてできるものではなく、「エモい」としか表現できない領域に達している。これこそが、ソロ男女たちの「エモ消費」であり、ソロ男女の大いなる消費の原動力なのだ。
ソロ生活者の人口ボリュームも消費機会も増えるソロ社会において、精神価値による「エモ消費」をどう喚起していけるか、彼らの「承認」と「達成」をどういう形で刺激できるかがが今後の大きな鍵となるだろう。

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また、「エモ消費」についての取材・講演依頼もお受けしています。よろしくお願いします。