生産性が叫ばれる現代にこそ必要な無駄とは?
幸福学の第一人者である前野隆司先生(慶應義塾大学大学院SDM研究科教授)と対談しまして、その記事の前編が公開されました。ぜひご一読ください。
前野先生は、大学で幸福学を教えるのに加えて、たくさんの幸福についての書籍も出されています。
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など。どれもおもしろい内容です。
前野先生はもともとロボットの研究をされていたのですが、それがいきなり畑違いの幸福学というものを追求しようとされたきっかけもユニークです。
人間の心を理解するため、ロボット研究をしていたんです。笑ったり喜んだりするロボットの心のアルゴリズムを作ることで、人間が笑ったり喜んだりすることを理解できると考えたのです。笑うロボットは、たしかに作ることができました。でも、むなしさを感じてしまったんですよ。ロボットは笑っているふりをしている、「人間の偽物」にすぎないと気付いたのです。そこで、本物の人間の幸福にせまるために、幸福学の研究をするようになりました。
独身者は既婚者と比べて幸福度が低いというのは、どの調査でも同様です。さらに女性に比べて男性の幸福度も低い。つまり、独身男性は誰よりも幸福度が低いということになります。
これは、間違った解釈してしまうと「結婚できない独身男性は幸せじゃない」という結論に誘導されそうですが、決してそうではなく、むしろ「男性というものはそもそも幸福度が低い」ということじゃないかと思うんです。
つまり、「群れるより孤独を好む」とか「共感より論理的思考で結論を出したがる」とか「ひとつのことにこだわり、没入しがち」とか、よくある男性あるあるの特性というのは、基本的にソロ気質だと思うんです。
逆に見れば、女性が幸福度高く、特に既婚女性や母親の幸福度が高いというのは、「みんなでつるむ」とか「共感し合う」とかいわゆる女性の井戸端会議気質こそが幸福度をあげるポイントだったりするとも言える。どうでもいい無駄話が重要だったりするんです。
要するに「他者とつながる」ってことですね。
そういう意味で、同じ女性でも、バリバリ仕事をしていて、専門職やクリエイティブ系の仕事をしている独身女性は、男性性の比率が高く、ソロ男度が高い。それによって不幸度が高いんだと思うと納得できる。
その他、前野先生との対談では、「生産性が叫ばれる現代にこそ無駄が必要」というお話も出ました。
かなり同意。世の中無駄ってホント大事。
この「生産性」とかいう言葉が、ちょっと前にもてはやされましたがあれ大嫌いです。
世の中、そんな生産性とか効率性とかで片づけられるかい!って思う。
働き方改革とかいう話題でいつも言われるのが「労働時間の短縮」なんですが、あれこそ「働く」とか「仕事」ってことをまったく理解していない「時給労働」の考え方だと思うわけですよ。
だから「ワークライフバランス」って言う言葉も虫唾が走るほど嫌い。
なにバランスとってんだよ?って思う
バランスとることじゃねーだろって。つーか、ライフとワークがどうして別物なのか理解不能。少なくもすべてがライフであり、ライフの中にワークなんてものは包括されているもんじゃないの?
そういう意味では、落合陽一さんのいう「ワークアズライフ」は真理だと思うし、もっと言えば個人的には「オールイズライフ」でしかないと思う。
最大の問題は、ワークとライフとを無理やり別物に区分して、ワークは「苦しいもの」という範疇に追い込んでしまう心理こそが不幸感が生まれる元。
もっとも人に依っては、「仕事とはやりたくもないことを金のためにいやいややっているものだ」という人もいるでしょう。それ自体を否定しないし、そうせざるを得ない人がいることも確かです。
みんながみんな「好きを仕事にできる」なんてことを言うほど僕は詐欺師じゃない。
だけど、「好きなことを仕事にした人」ばかりじゃなくて、「仕事を好きになった人」の方が多いんじゃないかってこと。好きな部分を見いだして、達成感を発見すれば、どんな仕事も没入できる。もっと言えば、仕事そのものが作業レベルでつまらないものでも、その人間関係によっては、それ自体を楽しくやりがいのあるものに認識変更させられる力があるはず。
だからこそ言いたいのは、職場での自殺とかの本当の理由は、労働時間の長さとかではなく、人間関係の悪さだと思うんですよ。
月曜日仕事行きたくない人のほとんどって、仕事そのものが嫌なんではなくて、その職場にいる誰かと会いたくないっていうのがほとんどだと思う。
そうした関係性の悪さがが不幸感を生み、心の欠落感をうめられなくなり、うつ病などに陥ってしまう元凶。(もちろん労働時間の長さに限度はあるよ。疲れるからね~)。