ソロで生きる力@荒川和久

独身研究家として、テレビや新聞・雑誌などのメディアに出演しています。著書「結婚滅亡」「ソロエコノミーの襲来」「超ソロ社会」「結婚しない男たち」など。東洋経済オンライン等でコラム執筆しています。執筆・取材・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージからお願いします。https://www.facebook.com/profile.php?id=100008895735359

「お母さんの請求書」に思う「ブラック主婦業」と「家族の自己責任論」

夫婦において「夫が外で働き、妻が家を守る」という意識。まあ、いわゆる専業主婦規範ですね。

現在もかなり根強く残っていることをご存じでしょうか?

実際は、もう共働き夫婦が専業主婦世帯の2倍いるにも関わらず、です。

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今回、内閣府が調査したデータを基に、都道府県別の男女の意識の違いをグラフ化してみました。見えてくるのは意識と生活との大きなズレです。とても興味深い結果です。

ぜひご一読ください。comemo.io

 

ところで、NHKの「クローズアップ現代+」でこんなのが流れてツイッターで話題になっていました。

 

 

 

このツイートでは、小学生の多様な意見を押さえつける日本の道徳教育の在り方について一石を投じているのだけど、この授業で使われている「お母さんの請求書」っていう物語もまたいろいろ問題があるような気がする。

「お母さんの請求書」で検索するといろいろ出てきますが、要はこんな話。もともとは「ブラッドレーの請求書」というらしいですが、日本では「たかし」という名前になってたりするらしいです。

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『日曜日の朝、たかしが二階から降りてきて朝食の食卓に付いた時のこと。たかしはお母さんのお皿の横に丁寧にたたんだ一枚の紙を置きました。お母さんはそれを呼んで不思議そうな顔をしましたが、すぐにいつもの優しそうな顔に戻って繰り返しその紙を読みました。

たかしの置いた紙は次のような内容だったのです。

「お母さんへのせいきゅう書

 お使い代 100円

 おそうじ代 200円

 おるす番代 200円

 合計 500円」

読み終わった後、お母さんは何も言いませんでしたがにっこり笑いました。

お昼の食事の時になって、お母さんはたかしのお皿の脇に500円をそっと置きました。

たかしはそれを見て、上手くいった!と嬉しくなりました。 ところが、お金と一緒に小さな紙切れが置かれていました。

たかしが取り上げてみるとそれはお母さんからの請求書でした。 その紙には次のような内容が書かれていました。

 「たかしさんへのせいきゅう書

 親切にしてあげた代 0円
 
 病気の時に看病してあげた代 0円

 洋服や靴やおもちゃ代 0円

 食事代や部屋代 0円

 合計 0円」

たかしははっとしました。

一回、二回…。たかしは繰り返し読むうちに涙があふれてきました。(ぼくは自分のことしか考えずにお母さんに請求書を出してしまった。なのにお母さんは…)

しばらくじっとしていたたかしはお母さんの元へ駆け寄り、さっきお母さんからもらった500円を返してこう言いました。

「お母さんごめんなさい。このお金は返します。そしてこれからはせいきゅう書なんかはなしで、何でも手伝わせてください。」 』

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要するに、「家族への愛はプライスレス」であることを言いたいのだろうけど、そうやって家族は、夫婦は、親子は無償の間柄で、何やってもタダなんだよ、って感覚が本当に正しいのだろうか?(正しいか正しくないかという基準がいいかは別にして)

それってブラック企業のやりがい搾取と何も変わらない。

だからって、「夫が家事や育児をやるのが当たり前」と声をあげたって、ちっとも夫はやらないし、むしろ育児に至っては、夫が協力すればするほど妻の育児時間が増えてしまうという結果も出ている。

邪魔なんだよね。素人が手出ししても。

 

別に専業主婦がいいとか正しいとかも思わないけど、夫婦それぞれ意識として「専業主婦がいい」「共働きがいい」と思っていたとしても、現実にはそうできない経済事情があるし、昔のような三世代同居でもないから、どうしても育児には夫婦のどちらかが時間を割く必要がある。

それを「家族だから無償でやるのが当たり前」っていうのは、あまりに家族の自己責任に押し付けすぎてはいないだろうか?

 

共働きが増えているから女性活躍が実現?
M字カーブが解消されたからいい方向?

なんか違うんじゃないかなあ。…って話です。そうしたデータの影にある個人の辛さを無視してはいけないと思う。