ソロで生きる力@荒川和久

来年1月に新刊「超ソロ社会-独身大国日本の衝撃」が出ます。「結婚しない男たち」とあわせてよろしくお願いします。独身研究の第一人者としてテレビ・ラジオたまに出ます。東洋経済オンライン、読売新聞オンライン他コラム等執筆しています。執筆・取材・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージからお願いします。https://www.facebook.com/profile.php?id=100008895735359

みんなと一緒という「個人主義」の日本人

世界各国の国民性を表した『沈没船ジョーク』というものがあります。

有名ですよね。

■世界各国の人々が乗った豪華客船が沈没しかかっています。しかし、乗客の数に比べて、脱出ボートの数は足りません。したがって、その船の船長は、乗客を海に飛び込ませようとしますが…。さて、船長が各国の人を飛び込ませるために放った言葉とは何でしょう?

アメリカ人に対して・・・「飛び込めばヒーローですよ」

ロシア人に対して・・・「海にウォッカのビンが流れていますよ」

イタリア人に対して・・・「海で美女が泳いでいますよ」

フランス人に対して・・・「決して海には飛び込まないで下さい」

イギリス人に対して・・・「紳士なら海に飛び込めますね」

ドイツ人に対して・・・「規則ですので海に飛び込んでください」

日本人に対して・・・「みなさんはもう飛び込みましたよ」

 

あるあるですか?

特に、日本人に関してはこの「みんなしてますよ」に弱いという意識が、日本人の中にも根強いですよね。日本人は、集団主義というか同調主義意識が高いものだ、と。

実は日本人ほど個人主義で、損得で動く民族もいないんです。ここでいう個人主義というのは西洋でいうところの個人主義とはニュアンスがちょっと違います。

西洋の個人主義とは「国家や社会の権威に対して個人の権利と自由を尊重することを主張する」ことであり随分と高尚です。「個人の自立独行、私生活の保全、相互尊重、自分の意見を表明する、周囲の圧力をかわす、チームワーク、男女の平等、自由意志、自由貿易に大きな価値を置いている」そうです。フランスが発祥らしいのですが、かなり理屈っぽいし、個人的にとどうでもいい概念です。

日本人の個人主義とは、もっとシンプルです。

要するに「自分ファースト」ってことです。

 

え?でも日本人は空気読むし、集団で行動するのが好きだし、みんなと一緒であることに安心するんじゃないの?

そう思いますか?

違います。

集団の中で「空気」を読むというのは、心から同調しているのではなく、そっちがメリットだと考えればそうするという個人の損得勘定からなんです。身も蓋もないけど。

社会心理学者の山岸俊男先生によれば、みんなと一緒がいいという集団主義・同調主義は、日本人よりむしろ欧米人の方が高かったという実験結果があるそうです。「裸の王様」が欧米の寓話だということからもそれは明らかですね。

日本人は「みんなと一緒がいい」のではなく「みんなと一緒ならリスクがない」と判断すれば一緒にするし、「みんなと違う方がメリットがある」と考えれば違うものにするという、あくまで個人単位の損得判断が根底にあります。

自分に得だからみんなと一緒にしているだけであって、得にならないなら一緒にする理由はないのです。

たとえば、お昼ご飯に弁当が支給されたとしましょう。弁当は全部で10孤。それを10人で分け合うので数的には問題ありません。しかし、10個のうち1個だけ、特上のウナギ弁当(値段にしたら5000円相当)があって、残り9個は普通ののり弁当(500円相当)だったとします。

さあ、あなたならどっちを選びますか?あなたが最初の選択権を与えられたとします。選択するのは1人ずつで。あなたが何を選んだか、他の人にはわかりません。

これ、日本人だろうとアメリカ人であろうと、うなぎ弁当を選ぶ確率は50%なんだそうですよ。

日本人の5割もうなぎを選ぶの?と思いましたか?それともアメリカ人がたった5割しか選ばないの?って思いましたか?

変わらないんですよ、日本人だろうとアメリカ人だろうと。選ぶ奴は選ぶし、選ばない奴は選ばない。だから実験すれば大体半々に落ち着くんです。

問題は、次です。

あなたが選択するのを他の全員が凝視していたとします。そうすると結果、日本人はほぼ全員がのり弁当を選びます。

なぜか?

それは人の目があって、自分がうなぎを選ぶことによって後で皆から文句や妬みを買うというデメリットがあるからです。美味しいうなぎを食べるメリットより、みんなから嫌われるというデメリットが優先するんです。うなぎを食うことは損になるって考え方なんですよね。

もちろん何も考えずみんなの後ろをついていけばいいという人もいるかもしれませんが、日本人の思考というものは常にそうした損得がうごめいているんです。無意識に。

悪いことではないです。損得で動くというとがめついように思えますが、命に係わることだと考えれば、当たり前の話です。もちろんこれは自分の子どもに対する場合とかは別です。あくまで対他人との関係性においてです。

昔の家は、留守にしていても家に鍵なんかかけていませんでした。村の共同体の中において、盗みに入るという行為は即刻共同体からの排除対象になるからです。盗んでも何の得にもならないどころか損だからしないんです。

戦国時代の武将は平気で主君を裏切ります。裏切って自分が生き延びる方が得だからです。明智光秀だけじゃない。荒木村重も松永弾正も浅井長政も、信長を裏切っています。ちなみに、僕は戦国武将の中で一番好きなのはこの松永弾正です。生き様が粋です。

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他にも、陶晴賢斎藤道三宇喜多直家穴山梅雪などたくさんいます。関ヶ原で有名な小早川秀秋もそうですね。あの前田利家だって賤ヶ岳で柴田勝家を裏切っていますし、そもそも柴田勝家だって若き信長を一回裏切っている。

何より最大は豊臣を裏切った徳川家康だと言えるでしょう。

すべて損得です

…というと、日本人は随分利己主義なんだな、と思うかもしれませんが、それは利己主義ではなく、自分の得を考えて行動することが結果として集団としての利益にもつながるという考え方に近いのです。

個人の損得という本質を選択することが、実は集団利益を産むというのが日本人的個人主義であり、それが「お互い様」の精神にもつながっていくのです。

 

 

『沈没船ジョーク』には後付けされたこんなオチがあります。

関西人に対して・・・「阪神が優勝しましたよ」

 

 

 

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