ソロで生きる力@荒川和久

独身研究家として、テレビや新聞・雑誌などのメディアに出演しています。著書「結婚滅亡」「ソロエコノミーの襲来」「超ソロ社会」「結婚しない男たち」など。東洋経済オンライン等でコラム執筆しています。執筆・取材・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージからお願いします。https://www.facebook.com/profile.php?id=100008895735359

前向きな気持ちを作るのは意志の力なんかじゃない

ちょっと前ですが、テレビで「今すぐ話さなきゃいけない未来」という番組がありまして、

3年後、田舎に帰らなくてもおばあちゃんの世話ができるようになる!?
5年後、一瞬でやる気がでる“気持ちスイッチ”が発売される!?
10年後、様々な感情を1コインで自動販売機で買えるようになる!?
20年後、たった1本のスプーンで世界中の味が楽しめる!?

みたいな話をいろいろやっていたのですが、その中で「一瞬でやる気がでる“気持ちスイッチ”」なる電気刺激装置を、やる気のない古市憲寿さんが装着したところ、急にニコニコして饒舌になったという…。

まあ、テレビなのでいろいろ演出はあるんでしょうけど、この「やる気スイッチ」を開発したのが慶応大学の先生(すみません、名前失念しました)で、彼女がそのうち「感情を買える時代がくるかもしれない」みたいなことをおっしゃっていました。

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自分の気持ちを買って帰られる「気持ちスタンド」。

どういうものかというと、自動販売機みたいなものの中に入って、自分が欲する気持ちのボタン(たとえば、やる気とか)を推すと、その感情が買えるというものです。ガソリンを売るスタンドならぬ、気持ちを売る「気持ちスタンド」だそうです。

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電気刺激によって感情が変えられるというのはその通りで、所詮感情も脳の勘違いというか、刺激に対する反応でしかないので。

ソロは既婚者と比べて幸福度が低い傾向があります。これし日本に限らず世界的にそうです。既婚者が持っている家族や子どもがいないという欠落感がそうした状況を生んでいるのだと思いますが、そうした不幸感を抱えたソロでも、この気持ちスタンドで前向きになったりするんでしょうか?

一見よさげに見えますが、実は怖いことでもあります。

テレビでは、モテない男子が思いを寄せる女の子をこのスタンドに呼び寄せて、好きという感情を彼女に植え付けるみたいな話をやっていました。理屈から言えばそういうことができるということです。催眠術でもそんなのがありますね。

実は、好きとか嫌いとかは絶対的な感情ではなく、きわめて自己暗示に近いものです。プラシーボ効果(ただの水でも良薬だと思って飲んでいると本当に病気が治る)も似たようなものです。

この機械が本当にみんなに幸せをもたらすのなら別に反対はしませんが、案外機械に頼らなくても人間は自分で「気持ち」のスイッチを入れられるものです。

但し、多くの人が勘違いしていますが、それは意志の力ではありません。「意志さえあればなんでも変えられる」というマッチョ思考こそが癌だと僕自身は思っています。

意志ではなく、環境を変えれば自動的に気持ちは変わります。どんなに不機嫌な人でも周囲が大笑いしている空間に入れられたら、間違いなく気持ちが変わります。最後には笑ってしまっているでしょう。

逆も然りです。怒りまくった集団の中にいると、どんな温和な人でも人は攻撃的になってしまいます。

気持ちのスイッチを変えたければ、今いる場所から離れて、違う場所に身を置けばいいのです。当然、違う場所にいけば付き合う人間も変われます。そうした環境が感情を作るのであって、作られた感情によって意識や理屈が後付されるに過ぎません。

私たちはすでに「気持ちスイッチ」をみんな持っています。ネガティブな感情をずっと抱き続けている人と言うのは、いつも同じ場所で同じ人と同じことをやっていないですか?

意志なんかで行動も人間も変わらないというお話はこちらでしています。「ソロエコノミーの襲来」にも掲載しました。

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