ソロで生きる力@荒川和久

独身研究家として、テレビや新聞・雑誌などのメディアに出演しています。著書「結婚滅亡」「ソロエコノミーの襲来」「超ソロ社会」「結婚しない男たち」など。東洋経済オンライン等でコラム執筆しています。執筆・取材・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージからお願いします。https://www.facebook.com/profile.php?id=100008895735359

人を動かすのは、利益か?恐怖か?

「ナッジ理論」というものがあります。

もともとは英語の「NUDGE」で、直訳すると「ひじで優しく押したり、軽くつついたりする」という意味。それが転じて、ちょっとしたきっかけを与えて、消費者に行動を促すための方法として注目されているものです。商売やマーケティングをしている人、これから広告業界などに行きたいと考えている人なら必須で知っておかないといけない理論だと思います。

このナッジ理論は、ノーベル経済学賞受賞のリチャード・セイラー教授が提唱したもので、僕も講演ではよくお話していますし、拙著「ソロエコノミーの襲来」の中で詳しく書いています。

さて、そんなナッジが災害時にも有効活用できるのでは、というNHKのニュースがありました。

www3.nhk.or.jp

これは非常に興味深い結果です。

地震や台風などの災害が起きた時、以下のふたつの放送、どちらを言われた方があたなは動きますか?

「あなたの避難がみんなの命を救う」
「あなたが避難しないとみんなが死ぬ」

一見すると、前者「あなたの避難がみんなの命を救う」っていわれた方が動きそうなものですが、実際は後者なんです。

キレイごとでは人は動かないということ。もっとはっきり言えば、リスクを提示しないと人は動かないということです。これは命に関わる案件においてとても大事な視点。避難を促す行政の放送だけではなく、テレビなどの放送においてもそうかもしれません。最近、台風などでは「命を守る行動をとってください」という言葉が使われていますが、本当はそんなキレイこどの言葉ではなく「逃げろ! 死ぬぞ! 」の方が効果あるんですよね。

お金で考えてもそうです。

「〇〇したら1万円あげます」より「〇〇しないと1万円取られます」と言われた方が人は動く。

ナポレオンはこう言いました。「人を動かす2つのテコがある。それは恐怖と利益である」と。

そして、利益より恐怖の方が人は直観的に動いてしまうものです。

 

とはいえ、これはいわゆる政治では恐怖政治だし、マーケティングにおいては脅迫マーケティングといわれているもので邪道なんです。

 

本来「ナッジ」というものは、人の行動をよりよくするための選択肢を提示することであり、こちら側の意のママに誰かを動かす手法ではありません。

 

今日、訃報が届きました。野村克也さんがお亡くなりになりました。生前、ぼやきと言いながら、ノムさんは多くの名言を残してくれました。そのひとつが前述したナポレオンの言葉に付け足しをしたものです。

ナポレオンは「人を動かす2つのテコがある。それは恐怖と利益である」と言ったが、私はこの2つに「尊敬」を加えたい。リーダーは「利益と尊敬と、少しの恐怖」で組織を動かしていくべきで、その潤滑油が「笑い(ユーモア)」だ。

非常に含蓄のある言葉です。

この「笑い」というか「ユーモア」は非常に大事です。

ナッジの好例として、よく使われるのが「ハエの絵」の話です。いつも利用者によって汚くなってしまう公衆トイレですが、男性の方はよくわかると思いますが、小便器の周りっていつも飛び散った小便で汚れています。それを「キレイに使いましょう」なんて貼り紙しても効果はないわけです。「もう一歩前へ」とかも同様です。

それを飛び散らないようにする仕組みが…

 

この続きは日経COMEMOにて。

 

comemo.nikkei.com