ソロで生きる力@荒川和久

独身研究家として、テレビや新聞・雑誌などのメディアに出演しています。著書「結婚滅亡」「ソロエコノミーの襲来」「超ソロ社会」「結婚しない男たち」など。東洋経済オンライン等でコラム執筆しています。執筆・取材・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージからお願いします。https://www.facebook.com/profile.php?id=100008895735359

本当に価値があるものとは何か?子どもたちの方がよ~く真理をわかっている。

大人は、子どもというのは未熟なものだと決めつける傾向があります。

本当にそうでしょうか?

 

家族旅行のプロモーションのためにANAが作った長尺のCMです。

1 Ticket ~魔法のチケット

まずは、子ども達に、それぞれ家族で行きたい場所を描いてもらいます。スキーや海や温泉など思い思いに描いていきます。「温泉で疲れをとってほしいから」と言う子供もいたりと、とても家族思いです。

そして、いざそれぞれの子供達にチケットが渡されるのですが、家族の人数よりも1枚少ないチケットしかもらえません。子供達は悩みます。

f:id:wildriverpeace:20161008231632j:plain

「どうしたらいいの?」

「パパもママもお兄ちゃんも行きたいだろうし…」。

「決められないよ~」

そんな子どもたちが悩む様子、どう決断するのかをを両親たちは別室で見ています。

 

最終的に、子どもたちが下した決断に両親は思わず号泣…と言う話。

お子さんがいらっしゃる方はもらい泣きするかもしれません。

youtu.be

 

4人家族なのに、チケットが3枚しかもらうないとしたら?

ここの両親たちもそうですが、大人たちは、父親か母親かどっちかが残るときめてかかっています。まあ、当然でしょう。小さい子どもを一人置いて旅行には行けないですから。

ずるい大人なら心の奥でこう考えていたかもしれません。

3人分はタダでもらえるんだから、一人分だけ追加で自腹で買えばいいゃ、と。

あなたならどうしますか?

 

子どもたちの決断は、こうです。

そんなチケットならいらない。そんな旅行なら行かない。

しかも4組の子どもたち全員が同じ回答。

 

3人が楽しい旅行に行くために、家族の誰か一人がつまらない思いをするのだとしたら、3人の旅行自体も価値がなくなる。子どもたちはそう感じたわけです。

旅行に行くこと自体に価値があるわけではない。旅行は家族が楽しい時間を共有するための手段でしかない。

本当に価値があるものとは何か?子どもたちの方がよ~く真理をわかっている。

 

ここに大人たちがハマる「損得勘定思考の落とし穴」があるわけです。ただで3人分のチケットがもらえた、という「得の事実」だけが強く頭に残ってしまい、それを手放すのは「損」だと思ってしまう。しかし、本当の「損」に気付いていない。もし、1人を置いてきぼりにして3人で旅行に行ってしまったら、それこそが家族にとって大いなる「大損」になったわけです。目の前の表面的な損得に心を奪われて、本質的な価値を忘れてしまう。よくあることです。

バーゲンセールだからと言って要らないものを大量に買い占めて後で後悔するなんてこともありますよね。

人間は自分が手に入れたものを高く評価したり、手放したくないという心理「授かり効果」という認知バイアスがあります。例えば、自分が買った宝くじと他人の買った宝くじを交換しようと言われてもしないですよね。自分のものの方が当たる気がするから。それが「授かり効果」です。

もうひとつ。

人は選択肢を提示されると、与えられた選択肢の中で、物事を判断してしまいやすい。それを「誤前提暗示」といいます。優秀なサラリーマンが営業で活用したりしていますし、そもそもあのヒトラーも演説で使った心理操作手法です。

今回の例でいえば、誰かを1人旅行からはずつなければいけない、お父さん?お母さん?という選択肢を突き付けられて、その中から選ばないといけないという心理状態に追い込むということです。実は、これ大人の方が引っ掛かりやすい。

大人になるというのは経験を積むってことです。経験によって人は学び、賢くなっていきます。しかし、経験を積んだがゆえに時として判断を誤る結果を招くこともあります。

経験詰めばいいってもんじゃない。

 

子どもと大人って書き方しましたけど、僕自身は「大人なんている?」って考えです。「経験を積んだ子ども」がいるだけであって、はじめから「大人」なんて本当は存在しない。

 

トロッコ問題ってご存知でしょうか?

「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」という倫理学の思考実験です。

線路を走っていたトロッコの制御が不能になり、このままでは前方で作業中だった5人がトロッコによって轢き殺されてしまう。あなたは、たまたまこの時線路の分岐器のすぐ側にいたとする。トロッコの進路を切り替えれば5人は確実に助かる。しかしその別路線でも、1人で作業しており、切り替えると5人の代わりにその1人がトロッコに轢かれて確実に死ぬ。Aあなたはどうしますか?

つまり、「5人を助ける為に他の1人を殺してもよいか」という問題である。

 

正解があるわけではないです。いろいろな考え方があっていいでしょう。

この問題に対して、ある子どもが出した結論がすごいです。

youtu.be

なんと、870万回も再生されています。

 

 

 

一人だけ生き残っても可哀想だし、一人だけ死んでも可哀想。どっちみち死んでしまうなら全員一緒が幸せだよね?という発想でしょうか…。

 

やはり、経験は大切なようです。