ソロで生きる力@荒川和久

独身研究家として、テレビや新聞・雑誌などのメディアに出演しています。著書「結婚滅亡」「ソロエコノミーの襲来」「超ソロ社会」「結婚しない男たち」など。東洋経済オンライン等でコラム執筆しています。執筆・取材・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージからお願いします。https://www.facebook.com/profile.php?id=100008895735359

老人になればなるほど幸せになるというカラクリとは?

幸福度について世の中の定説というか常識とされていること。

・日本人は世界に比べて幸福度が低い。

・未婚は既婚に比べて幸福度が低い

・男は女に比べて幸福度が低い

これ大体誰が調査してもこんな結果です。そして、年代別に見ても同様で、20~40代にかけて不高度が高まり、50代を過ぎて高齢者になればなるほど幸福度があがるというもの。

有名なのは、アメリカ35万人を調査したストーン博士の研究。それによれば、人生の幸せを感じる度合いはU字曲線らしいです。幸福度は10代と80代でもっとも高く、一番低いのが40代から50代前半というものです。

以下は僕が調査した結果ですが、まさにその通り。

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40代が不幸度MAXなのは、まあわかる。

 

toyokeizai.net

いろいろあるし、体調を崩しやすい年頃でもあるし、仕事上では名ばかり管理職として上からも下からも大変な時期だろうしね。

だけど、老人になればなるほど幸福度があがるというのが、正直さっぱり理解できない。

好々爺という言葉もあるけど、最近の老人は電車の中や公園で喚き散らしていたりとか、ちっとも幸せそうに見えない老害爺もたくさんいるのに。

 

でもこういうのはすでにいろんな博士が研究している。

ネガティブバイアスというものがある。動物の死体とかゴキブリとかそういう不快な写真を見た時、人は普通の写真や赤ちゃんなどせのかわいい写真を見た時よりも強い反応を示します。要するに不快な情報ほど人間は過敏に反応してしまうというものです。これは若い人ほど敏感ですが、年をとるとそれが薄れてくるらしいです。

いろんな経験を積んで、そんじょそこらの不快な情報ごときには動揺しなくなる。という見方もできますが、感情の起伏が鈍感になった単なる老化現象ともいえる。

コロラド大学のキスレー博士はこれを何年も研究して、「年齢とともにこのネガティブバイアスは減る」と結論づけた。むしろ配偶者と死別したとか、重病を患ったなど人生において苦しい経験をした老人ほどこのネガティブバイアスが減るのだそうだ。

スタンフォード大学のマザー博士らは、扁桃体に着目。扁桃体は感情をつかさどる器官ですが、一般には恐怖や不安などの感情に関与するといわれています。しかし、マザー博士らよると老人はプラスの情報に接したときに強く反応したという。つまり、老人の扁桃体はプラスの感情を生み出すことに寄与しているのだそうだ。

 

老人になるとマイナスの感情が減り、プラスの感情が増える。だから老人になれば幸福度が増すのだ、という解釈もできるけど…

 

ほんまか?

 

むしろ老化によってマイナス感情が麻痺しただけにすぎないのではないか?もっと言うと、扁桃体のバグじゃね?って思うんだけど。

 

それってちっとも幸福度が増したことにはならないよね。

 

…と思ったんだけど、待てよ、と。

 

不安や恐怖、不快というマイナス感情が大きくあればあるほど不幸度は高まるというのはその通り。マイナスバイアスに敏感な若い人がそれを感じやすいのはそうだし、40代は、加えてそこにマイナスの体験もたくさんする機会も多いから不幸度が高まるのもわかる。

一方、老人になればなるほど40代以上にマイナスの経験も積むわけです。本当は年を取れば取るほど不幸度があがるはずなのに、そうならないのは、そこに脳としての防御反応が関係しているからでは?

加齢によってマイナス経験は増えるんだけど、それを全部引き受けていたら耐えられなくなる。だから、一定の年齢からマイナス情報への麻痺機能が作動すんじゃないか、と。

そう考えれば、老人になればなるほどマイナス情報を取り入れなくなるわけで、不幸を感じにくくなる。

決して老人が幸せになっているんじゃなくて、単に不幸に鈍感になっただけ。

 

そう考えると腑に落ちる。

 

もしそうだとしたら、それは幸せと呼べるのか?