ソロで生きる力@荒川和久

独身研究家として、テレビや新聞・雑誌などのメディアに出演しています。著書「結婚滅亡」「ソロエコノミーの襲来」「超ソロ社会」「結婚しない男たち」など。東洋経済オンライン等でコラム執筆しています。執筆・取材・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージからお願いします。https://www.facebook.com/profile.php?id=100008895735359

「若者が恋愛やセックスしなくなった」なんて真っ赤な嘘。

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「若者は恋愛しなくなった」だとか、やれ「草食男子」だの絶食男子だの…とにかく「若者は恋愛離れ」しているという結論付けたくて仕方が無い人たちがたくさんいるらしい。あげくの果てに、昨今の晩婚化や少子化は若者の恋愛離れが元凶だという根拠のない指摘をされる方もいる。

決してそんなことはありません!

若者の恋愛離れ説、その拠り所となっているのは、国立社会保障・人口問題研究所の第14回出生動向基本調査報告書なんですが、「交際している異性がいない」という項目が男で61.4%、女で49.5%と近年最高の数値であることをとりわけ取り沙汰しているだけなんです。

よ~く全体の数値を見て頂きたい。以下にグラフを引用する。

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確かに「異性の交際相手がいない」項目は時系列に男女とも増えています。が、交際って何か?という話なんです。交際って彼氏・彼女という恋人がいるということなんじゃないでしょうか。

だとすれば、「異性の恋人がいる」という項目にまず着目すべきです。

それによれば、男性は、87年から2010年にかけて19%→23%→23%→22%→24%→23%とほぼ変わらない。女性も26~33%の間で変わらず、2010年も31%と特段低い数値でもない。

これは「結婚しない男たち」にも明記しましたが、大体「彼氏・彼女など付き合っている相手がいる率」というのは、いつの時代もほぼ30%程度で変わらない。

「異性の交際相手がいない」が減った分はまるごと「異性の友人がいる」という項目に当たるわけです。友人って交際相手なのか?という話です。

これは、いわゆる友達とつるんで遊ぶということから、ソロ活動する比率が高まったものと見るべきでしょう。2002年以降「交際相手なし」が増えるのも、丁度ネットの世界の隆盛が始まったことと照らせば納得できます。

 

性体験についても見てみましょう。以下のグラフが出生動向基本調査に基づく経年推移です。

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「性経験なし」の青のグラフだけを見ると、男女ともに2010年だけ数値があがっている。これだけ見て、2005年~2010年にかけて草食化が進んだのだと言いたいのかもしれないが、「性体験あり」の関しては男女ともに逆に数値があがっているのだ。男に至っては、1987年以来最高数値の60.2%になっている。

つまり、セックスをしない男女も多少増えたかもしれないが、全体的にはセックスをする率が増えていると見るのが正しい。

ちっとも草食化なんかではないんですよ。

ちなみに、男性に関して年代別に見ると、18-19歳は前回(2005年)比-5.5%だが、20-24歳は-1.2%、25-29歳に至っては+5.7%、30-34歳も+5.6%となっている。

結婚と同様、セックスについても晩体験化という傾向は見れるが、決してしないわけじゃない。

これは別に、恋愛やセックスに対して興味がなくなったわけではない。恋愛やセックス以外に時間を使う選択肢が増えただけです。

「若者」という括りで見てしまうから全体の本質を見あやまる。

80年代も現代も「彼氏・彼女のいる率」はほぼ3割で変わらない。付き合える率は3割なんです。そういう人たちは、時代とか世代とか関係なく楽しくよろしくやるのであって、一定数いつも存在するんです。逆に言うと、日本人はいつの世もたった3割しか恋愛できない民族なのかもしれない。イタリア人やフランス人とは違う。

性体験については、むしろ時代とともに男女とも経験率が高くなっているわけで、とりわけ女性に関しては1987年時点18-34歳の65%が処女であったという事実の方が驚愕です。

実は、僕自身が注目しているのは、性体験の比率構造時代が男女ともに同じ形になってきつつあるということ。男女同質化なんです。

この男女同質化、これこそがソロ社会化が進む大きな要因になるのですが、その説明はまた後ほど。