ソロで生きる力@荒川和久

独身研究家として、テレビや新聞・雑誌などのメディアに出演しています。著書「結婚滅亡」「ソロエコノミーの襲来」「超ソロ社会」「結婚しない男たち」など。東洋経済オンライン等でコラム執筆しています。執筆・取材・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージからお願いします。https://www.facebook.com/profile.php?id=100008895735359

結婚と独身の男女利点差分結果から考察する「結婚はオワコンか?」

毎度、資料として活用している出生動向調査ですが、このほど2015年の第15回結果概要が発表された。

今回は、独身者調査の中の「結婚の利点」「独身の利点」という相反する項目について取り上げてみたい。

まず、「結婚の利点」、ちなみにこれは独身者が考える結婚の利点であって、既婚者のものではない。経年変化で解説されている内容を引用する。

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出典は、第15回出生動向基本調査概要から。

結婚することの具体的な利点のとらえ方をみると、男女とも「自分の子どもや家族をもてる」を挙げる人の増加傾向は、第9回調査(1987 年)からほぼ一貫して続いている。2000 年代以降、「精神的安らぎの場が得られる」と「愛情を感じている人と暮らせる」は減少傾向、「親や周囲の期待に応えられる」は増加傾向にある。また、女性では「経済的に余裕がもてる」が増加傾向にあり、今回初めて2割を超えた。

つまり、結婚とは「自分の子どもや家族をもてる」のが利点であると男女とも大多数が考えていて、減少傾向にあるとはいえ「精神的安らぎの場が得られる」と続く。

きわめて普通だ。

 

 

 

続いて、独身の利点。

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独身生活の利点は、男女ともに「行動や生き方が自由」を挙げる人が圧倒的に多く、男性では 69.7%、女性では 75.5%であった。それ以外では「金銭的に裕福」、「家族扶養の責任がなく気楽」、「広い友人関係を保ちやすい」が比較的多い。これらの傾向は第9回調査(1987 年)以降ほとんど変わっておらず、結婚すると行動や生き方、金銭、友人関係などが束縛されるという未婚者の感じ方は根強い。ただし女性では、友人関係が束縛されるという意識は弱まってきている。

独身生活の利点は、男女ともに「行動や生き方が自由」とのことだ。

これまた、調査するまでもない普通の結果。

 

 

確かにこれは間違っていない。グラフと数字から男女別にみればそのとおりだ。但し、あくまで男女別に見たら、の場合だが。

男女それぞれで見ちゃいけない。

結婚とは男女でするものであり、お互いが考える利点が食い違っているとするならば、それはマッチングを阻害する要因となる。ここは、本来男女各々の数字を見るのではなく、男女の差分を見るべきだと思う。

 

 

作ってみた。

まず、「結婚の利点」。

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左側に伸びていれば「女性が利点と感じている部分が多い」、右側なら「男性が利点と感じている部分が多い」ということになる。

一目瞭然。

女性は、「親や周囲の期待にこたえられる」もさることながら、圧倒的に「経済的に余裕が持てる」部分が男性より多いということ。

一方、男性は「社会手的信用」「生活上便利になる」部分などほぼ下降傾向で、唯一「精神的安らぎ」部分がずっと横ばいを保っている状況だ。

 

 

続いて、「独身の利点」も見てみよう。

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こちらも一目瞭然。

「行動や生き方が自由」を利点としているのは意外にも女性の方が多く、しかも伸びている。女性は独身の利点を「自由」で、かつ「友人関係の保持」「社会との関係保持」「家族との関係保持」という関係性の継続を利点としてあげている。

男性は「金額的に裕福」が伸びまくっている。「家族扶養責任がない」というのも経済的要因とニアイコールだ。

 

上記「結婚」と「独身」のそれぞれの男女差分からわかること。

女性が結婚しないのは、結婚をすると「不自由になり」「友人や家族や職場との関係がなくなる」という恐れがあるから。その上、結婚に対しては「家族という新しい社会を手に入れることができ」「経済的余裕が生まれる」と期待している、と言える。

つまり、今までの関係性を失ってもいいくらい、経済的余裕がなきゃ女性はあえて結婚するメリットを感じないとも言える。身も蓋もない言い方しちゃうと、そこには愛情なんてものはもはやあまり重要ではないということだ。婚活女性が相手の年収条件にこだわる理由はこういうところに潜在している。

男性が結婚しないのは、「自分のために金を使いたい」からだ。結婚に感じられるメリットは、もはやほとんどない。未婚でも社会的信用を失うわけでもなく、結婚したからといって専業主婦になってくれるわけでもないから生活上の利便性も変わらない。「自分のために金を使える自由」を捨ててまで、結婚をする必要を感じられないのがおわかり頂けると思う。

 

ただ、これを逆説的に考えれば…

もし結婚したくてたまらない女子なら、少々年収低くても「相手の消費の自由を保障」し、ちょっとだけ「精神的な安らぎ」と「性的充足」を与えればコロッと攻略できるということだ。実に簡単なことではないだろうか。

結婚したい非モテ貧乏男子なら、とにかく「金を稼ぐ」ことが一番なんだが、それができていたら苦労はしない。だったらせめて、「金のかかる自分の趣味を捨てること」。趣味を捨てて奥さんを獲得するのだ、という意識転換を測らないと無理でしょう。そして、その上で、「奥さんの行動の自由を保障」すること。専業主婦にとじこめず、外の世界との関係を継続させてあげればいいという話でもある。

ですが、結婚したい女は相手の年収や経済的安定は絶対に譲れないらしく、結婚したい男もまたなぜか(子どもが生まれたら)専業主婦になってほしいという希望が強いときた。

 

 

お手上げですね。

とにかく、結婚に対する意識では、男も女も所詮「金」なんである。女が結婚したがるのも金ならば、男が結婚したがらないのも金。双方譲れないポイントがここでぶつかっているわけだから、そりゃ非婚化が進むわけです。

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結婚できない原因が金ということではないですよ。しようと思えばできるのに、金を攻めたいがために結婚したがらない女子、金を守りたいがために結婚したがらない男子という構造です。つまり、結婚しない理由が金なんです。収入の多寡ではない。使用用途の問題です。

「この年収じゃ結婚できないよ」と愚痴っている男に限って、案外本気で結婚する気が無い。「できない」という言葉を防波堤にしているだけ。

 

 

さて、そうなると結婚はオワコンなのか?

ガラパゴスな既婚者たちは、「それも含めて結婚なんだから我慢しなさい」とか精神論ぶちかましてきますが、無視!我慢の果てに3組に1組が離婚という現状なんでしょ?

 

 

やっぱり、結婚はオワコンか?

そんなこともないと思います。

現状でも、30代で結婚している男の年収は300万円台です。そして、その給料でも共働きではなく専業主婦で子育てしている夫婦もたくさんいます。パート等はしているかもしれませんが。そういう人たちは、低い世帯年収で子育てをしているから不幸ですか?むしろ、イクメンだなんだかんだ言って、夫婦間で家事や育児を押し付け合っている高年収夫婦より幸せかもしれませんよ。ちなみに、アメリカでは今専業主婦形態がまた増加しています。

そういうことです。

 

 

共働きで多少世帯年収が増えて裕福になったからといってそれがなんなの?

そう思います。