ソロで生きる力@荒川和久

独身研究家として、テレビや新聞・雑誌などのメディアに出演しています。著書「結婚滅亡」「ソロエコノミーの襲来」「超ソロ社会」「結婚しない男たち」など。東洋経済オンライン等でコラム執筆しています。執筆・取材・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージからお願いします。https://www.facebook.com/profile.php?id=100008895735359

クリスマスデート文化はいつ作られた?誰が作った?

 カップルなどで賑わうクリスマスイブの12月24日、東京・渋谷で「非モテ(モテないこと)」を自称する人々が集まり、「クリスマス粉砕!」などと叫びながらデモ行進したらしいのですが…。

 

www.huffingtonpost.jp

 

いや、まあ別にデモしたきゃしてもいいけど、もはやクリスマスにカップルでいるってこと自体がマイノリティで、むしろあなたたちの方が多数派なんですけどね。

何度も言ってますが、彼氏・彼女のいる率は3割しかいない。7割はいないんです。

 

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みんな以前ほど「クリスマスまでにパートナーがほしい」なんて焦ってもいないし、イブだから無理やりデートしなきゃという意識もありません。

 

そもそも「クリスマスにはカップルで過ごす」なんて文化(いわゆるクリスマスデート文化)が生まれたのはいつかご存じですか?

 

きっかけはこれ。

松任谷由実「恋人がサンタクロース」

  

SURF&SNOW
SURF&SNOW 松任谷由実

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これは1980年12月に発売されたアルバム「SURF&SNOW」に収録されていましたが、70年代までのクリスマスデートはグループでボウリングなどみんなでわいわいやるのが主流でした。この歌詞は、「恋人である男性がプレゼントを持って女性の家に来る」ことを歌っていて、クリスマスはカップルがそういう風に過ごす夜なのだというお墨付きを与えたようなものです。

 

とはいっても、すぐに世の中に浸透するわけじゃなく、翌1981年に発売された田中康夫著「なんとなく、クリスタル」のカップルのデートの仕方が話題になったりという世の中の流れがあって、同年に空間プロデューサーの松井雅美が西麻布にレッドシューズというその後のカフェバーブームの先駆けとなる店をオープンさせています。このころから男女のデートスポット空間というものが商売として注目され始めたわけです。

さらに、「恋人はサンタクロース」を松田聖子がカバーしたのが1982年。一気に「クリスマスはカップルで過ごすもの」という認知が広がります。

そして、そんな中、遂に1983年、12月23日号の「an an(アンアン)」では、「クリスマス特集」が組まれることになります。「今夜こそ彼の心(ハート)をつかまえる!」と題して、恋人たちのためのクリスマスの過ごし方をストーリー仕立てで紹介した。

 

世の中はまさに女子大生ブームの走りでした。ミスDJリクエストパレード」というラジオ番組が人気で、当時青学生の川島なお美がDJをやっていた。

同じ年開業したばかりの赤坂プリンスホテルは、それ以降クリスマスはカップルのメッカとなった。12月25日の朝のチェックアウト時間帯は地獄絵図のような混み具合だったらしい。らしい…というか、実はその時期僕は赤プリでバイトしていたのでよく知っています。

一部屋25000円~10万円くらいするのに、どう見ても大学生としか思えないカップルがイブの夜宿泊しては、シャンパンなどをルームサービスで頼むという時代でした。

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まとめると、クリスマスデート文化は、1980年のユーミンの歌をきっかけに火がついて、81-82年に一部で流行し、1983年an anが記事を掲載した時点で全国的に認知獲得。という感じでしょうか。

※一部専門家がクリスマスデートブームはan anが作ったという人がいますが正しくありません。an anが作ったのではなく1981年からの世の中の流れを反映させてan anが記事化して大衆に広まったと考えるのが妥当でしょう。そして、きっかけはやっぱり「恋人がサンタクロース」という曲なんですよ。

※また、クリスマスデート文化はクリスマス商戦のために流通やメーカーが作ったと考えている人も多いですが、もともとクリスマス商戦は家族のイベントとしてあったものです。当時は家族世帯が標準であり、企業はそこを狙えばよかったのであえて若者や独身にフォーカスする理由がありません。

 

クリスマスソングと言えば、ある一定年齢以上の人は山下達郎の「クリスマスイブ」をあげると思う。この曲がシングルとして発売されたのも1983年。もともとは1983年夏に発売されたアルバム「Melodies」に収録されていたものです。この「Melodies」は名盤なのでぜひ聴いてほしい。

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この曲を使用したJR東海のCMが放送されるのは、ずっとあとの1989年。第一作時点はクリスマス・エクスプレスではなく、ホームタウン・エクスプレスと言っていた。主演は当時まだ15歳の深津絵里

 

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 有名な牧瀬理穂のやつは1990年の第二弾目です。 

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クリスマスソングの大御所としてはもうひとつワムの「ラストクリスマスがありますが、あれは山下達郎の「クリスマスイブ」の翌年1984年の発売です。

 

クリスマスとは、男が高価なプレゼントを買い、高級レストランで食事をするデートがスタンダードになるのはまさにこの時期1985年頃からです。世はDCブランドブームでもあり、1986年からのバブルへとその後怒涛のごとくなだれ込んでいくわけです。

興味深いのは、まさにこのクリスマスデート文化時代に青春真っ盛りの大学生だった男女が、今一番結婚しない生涯未婚率最高記録を打ち立てた張本人であるということ。

そう考えると、「クリスマスはカップルで過ごすもの」と洗脳されて頑張った人たちが生涯未婚で残っているというのはなんという皮肉でしょうか