ソロで生きる力@荒川和久

独身研究家として、テレビや新聞・雑誌などのメディアに出演しています。著書「結婚滅亡」「ソロエコノミーの襲来」「超ソロ社会」「結婚しない男たち」など。東洋経済オンライン等でコラム執筆しています。執筆・取材・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージからお願いします。https://www.facebook.com/profile.php?id=100008895735359

トランプ大統領を差別主義者とか言いながら、独身者を差別する人たち

昨日の東洋経済オンラインの"独身男が「結婚コスパ悪い説」を信奉する理由-女は「カネをよこせ」、男は「カネは渡さん」"の記事についての続報です。

wildriverpeace.hatenablog.jp

 

最終的には、東洋経済で112件、ヤフー記事で296件、NewsPicksでも208件のコメントが寄せられました。

本文を最後まで読んでコメント書いて下さった方には、本当にありがとうございます、と言いたいのですが、やっぱりというか、案の定というか、大多数の人がタイトルしか読んでないんですよね。

昨日も書いた通り、この記事は、独身男女の結婚に対するメリットデメリット意識が根本的に分断されていることに問題がある、という指摘をしたわけです。別に、独身と既婚の分断については何一つ語っていないし、結婚の是非についても触れてはいない。

にも関わらず、既婚者たちからの批判と非難と誹謗がどっさりきました。

どうにも既婚者にとって「結婚・育児」と「コスパ」という言葉を結びつけることはとても嫌悪感を抱くことらしいです。

 

批判はまだいい。議論のスタートとなるから。

ですが、非難や誹謗となると手に負えない。

 

例えば…

結婚もしたことないくせに何言ってんだ?

したことない人間は結婚について考えちゃいけないんですか?考えたあげく、後ろ向きになってはいけないんですか?それって、法律に違反してますか?それとも未婚の筆者である僕自身に向けられた個人攻撃なんでしようか?いずれにしても筋違いの非難としか思えない。自分が経験したことしか語れないなら、それはもはや文明社会ではありませんね。

 

結婚に費用対効果的な見返りを求めることが間違いだ!

それはあなた個人の結婚価値観であって、費用対効果や見返りとしての幸福感で結婚を考える人がいたっていいでしょう?人の価値観を否定できるんですか?価値観なんて個人の自由でしょう?大体、そんなこと言ったら、「子どもがほしい」という理由で結婚することだって、子どもを産み育てる幸せという効果の見返りを求めている。同じです。

 

他にも具体的な例では、

 

精神科医という御仁からは、こんなコメントが…

ま、そういう御仁はセックスもコスパ悪いんで、自慰でもして、コスパのよい牛丼でも食って一生を終えてください

これは丁寧語だけど完全に誹謗ですよね。

統計に基づいた考察をするだけで、なぜここまで貶められないといけないんでしょうか?

 

あげくの果てに、弁護士という既婚女性からは以下のコメント

結婚をコスパなどという表面的な指標で考えるから、いまだに独身なのでは。そういう考えの人は結婚しなくていいと思います。相手が不幸になる。

これにはもう、完全に個人攻撃。会ったことも絡んだこともないのに、弁護士ともあろう方が2ちゃんみたいな書き込みしている。

もはやヘイトでしょう。

大体がこの記事は、客観的なデータを基にした考察であって、決して自分のことを書いたわけじゃないんですけどね…

 

そして極め付けは、

コスパコスパうるさい。そういうこと言うなら生きることだってコスパ悪い。だったら、生まれてこないほうがいいよ

これに至っては、「死ねよ」と同義だよね。

ひどいもんだ。

 

これ書いているの、みんな既婚者であり、人の親(多分)の言葉です。子どもに胸張れる言葉なんでしょうか?

議論のための異論や批判ならなんとでもなるが、こうした先の続かない言いっぱなしの非難や誹謗じゃどうにもならない。

こう書くと、彼らは頭が良いから、「特定の誰かを指した言葉ではない」とか「あくまで一般論として言ったまでだ。個人攻撃したわけじゃない」とか一流の言い訳をすると思います。ですが、本人がどういうつもりで言ったかは関係なく、受け取った側が嫌がらせだと感じたらそれで「ハラスメント」は成立します。

 

どうして既婚者たちは、独身者の選択と決断を頭ごなしに否定するんだろう?

拙著「超ソロ社会」の第2章でも「ソロで生きる人々を許さない社会」と題して書いたことがリアルに起きているわけです。

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こうしたことを書いている人は、トランプ大統領を差別主義者だとか言うんですが、あなたのやっていることも同様ではありませんか?人それぞれ価値観や幸せの感じ方があるのだということを認めないことも、それはひとつの差別だと思います。

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そんなにソロ社会になることが怖いのですか?

僕自身は、「家族とソロは対立しない」という未来を提唱したいのに、家族の既婚者の方がソロを敵視し、あまっさえ病原菌扱いしている現状を見ると、本当に悲しくなる。あなたたちの結婚規範の押し付けこそが、今の未婚者たちの結婚離れを推進したといっても過言ではないんですよ。それだけではなく、「結婚して子どもを産まない人間なんて半人前だ」という言葉によって、どれだけ多くの独身男女の心に「自己否定感」を植え付けていると思っているのか?

だから独身男性からは、こういう自虐的コメントが出る。

男が結婚しない理由なんてのは、従前どおり結婚できない言い訳ってことでいいですよ。人間的魅力がないどこかおかしい奴って認識でいてくれたほうがいいです。

 

独身者をディスる既婚者たちがやっていることは、イジメであり、精神的虐待と変わらない。

 

一部、知識のある方からは、こういうコメントがあった。

(結婚を)コスパで考えるのは、別におかしな話じゃない。そもそも、結婚を「好き嫌い」でやりはじめたのは、比較的最近のこと。昔は家族単位で仕事をしていたから、結婚するのは就職に近くて、家の都合のため、親が決めてしまうことも多かった。要するに、結婚して子供を残していかないと本当に生きていけなかったから結婚していたのであって、男女が好き合っていたとは限らなかった。いまはそういう結婚の社会的圧力はほとんど消えてしまった。結婚がオプションにすぎないなら、損得を男女ともに考えるのは当然のこと。そして、損だと思う人たちが多いので、結婚する人が減っているのでしょう。

まさにこれは歴史認識的にも正しい。そもそも日本人には、LOVEという概念だって明治以降に西洋から刷りこまれた歴史の浅い物なんです。

明治維新後、日本人は皆婚になり、人口が爆発的に増加したのは知っての通りですが、それまでは世界一の離婚大国でもあり、自由恋愛で、セックスに関しても奔放な民族でした。今の1億2千万の人口こそが異常値であって、恋愛だなんだでくっついて結婚して…という流れの方がもしかしたら病気なのかもしれないんですよ、長い歴史から見たら。

冷静に人口増加の長期推移を見てください。

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1900年頃からの増加がいかに異常な状態だったかわかるでしょう。日本だけではなく、世界的にそうだったわけですが、農業革命から産業革命に移行する段階でどこの国もたどる道です。そして、人口減少もまた新たな情報革命の中では不可避なものなんですよ。

少子化は進むし、未婚化・非婚化も避けられない。でも、だからこそ、子どもを産み育てる家族と子どもを持たないソロたちは分断しちゃいけないんですよ。

血のつながった者同士がこじんまりと家族ごっこする時代は終わりです。

社会全体の中で、家族もソロもつながって、次世代の子どもたちをみんなで育てる意識を持つ、日本総長屋状態になるべきなんです。

 

ホント、それがわかんないのはマジ病気だわ。ああ、でも、病気なのか…と思えば、ああいうディスりコメントも納得ができます。

 

※既婚者の中にもちゃんと理解して、議論できる相手はたくさんいます。既婚者全員が病気ではありません。念のため。