ソロで生きる力@荒川和久

独身研究家として、テレビや新聞・雑誌などのメディアに出演しています。著書「結婚滅亡」「ソロエコノミーの襲来」「超ソロ社会」「結婚しない男たち」など。東洋経済オンライン等でコラム執筆しています。執筆・取材・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージからお願いします。https://www.facebook.com/profile.php?id=100008895735359

江戸時代からあったAKB商法とコスプレのお話。

江戸時代というとすぐ「暴れん坊将軍」とか「遠山の金さん」とか「桃太郎侍」などを思い浮かべる人が多いと思います。しようがないですね。時代劇といえば、大体「お侍さん」のお話なんですから。

日本人なのに、意外に知らないのが、「江戸時代の町人」のこと。

 

知ってました?江戸時代の江戸も男余りだったこと。

江戸では男性の数が女性の倍以上いました。男の有配偶率も50%程度で独身男が多かったんです。これらは歴史的な史料でも裏付けされた事実です。

コラムを連載している東洋経済オンラインで、今回は番外編として対談記事が公開されました。

お相手は、江戸時代を中心とした著書を数多く持ち、江戸文化歴史検定1級を最年少で取得するなど「お江戸ル」としてもご活躍中の堀口茉純さんです。

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 とてもおもしろい対談になっていますのでぜひご一読ください↓

「独り身大国」江戸と現代の知られざる共通点 コスプレに熱中、食事はデリバリーを頼む

toyokeizai.net

 

個人的にびっくりしたのは、江戸時代にもコスプレがあったということ。

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堀口:いちばん大きな仮装のイベントは、吉原で1カ月間仮装パレードをする「吉原俄(よしわらにわか)」というイベントでした。そのときは花魁(おいらん)ではなく、吉原の裏方で働いている芸者たちが出し物をするんですよ。仮装をして踊ってと、まさにハロウィンのパレードみたいな感じです。 

 

江戸幕府ができた当時の日本の人口は、1227万人。吉宗の頃の享保年間には3128万人まで増加しています。ですが、そこから明治維新までの150年間はずっと人口停滞期が続きます。明治維新時点の人口は3330万人でした。もちろん災害や飢饉などもあったでしょうけど、昔の女性は多産だったイメージがあるのになぜ人口が増えないんだろうと不思議じゃないですか?

歴史人口学の大家鬼頭宏氏によれば、以下の通りです。

「晩婚化」が進みました。晩婚化といっても、3~4歳ほど婚期が遅れただけですが、それで1人か2人、子どもの数を減らすことができました。晩婚化がなぜ進んだかといえば、1つには、織物や糸紡ぎなど、女性が活躍できる仕事が増えたためです。また、食糧が行き渡って栄養状況が改善され、子どもの死亡率が下がったことも大きく影響しています。

晩婚化、女性の活躍、死亡率の低下。何やらまるで現代のようです。

 

こうした要因で江戸の人口は停滞したわけですが、前述した通り江戸にはソロ男があふれていました。特に、家を継ぐ必要のない次男坊以降の男は、むしろ「結婚なんかしなくていい」と放置されていた。

江戸には上京してきた「ひとり暮らし」の男の多くが長屋住まいでした。そんな彼らのために発達したのが食産業だったわけです。居酒屋もこの頃できていますし、本文にあるデリバリー型の商売は独身男の需要によって大きく拡大しています。

江戸とアキバが似ている面でいうと、今でいうAKB劇場とかメイド喫茶にあたる「茶屋」というものがありました。茶屋には、いわゆる看板娘がいて、それが評判になると行列ができたほどです。まさに「会いに行けるアイドル」

有名なのは江戸の谷中(やなか)の笠森稲荷の前にあった鍵屋という茶屋。その茶屋には、お仙という美しい看板娘がいました。お仙は明和の三美人の一人として名高く、浮世絵師の鈴木春信が描いています。今で言うアイドル写真集です。

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彼女から2、3杯のお茶を入れてもらい、ちょっと言葉をかわして四十文(2千円)前後というから、決して安くない。あまりにも評判になるもんだから、鍵屋も美人画の他、手ぬぐいや絵草紙、すごろくといった所謂「お仙グッズ」も販売して、これがまた売れたというんだから、「独身男ってアホ」だと思う。

歴史学者の磯田道史氏曰く、こうした現象は江戸にとどまらなかった。

AKBの総選挙と同じく「美人くらべ」も勃発。その動きは(SKE48HKT48NMB48などでそうしてきたように)、江戸時代にも全国へ普及し、特に名古屋で盛り上がった。

まさにAKB現象は江戸時代にもあったわけです。

そうして最後、お仙は、この鍵屋の運営してきた幕府御庭番の倉地家のエリート侍の嫁になってしまう。秋元康がおニャンコのメンバーを嫁にしたようなもんです。

当時は情報網がなかっため、お仙は突然行方不明となったようになり、騒然となったようです。中には、『嫉妬に狂った茶屋のオッサンから逃亡し、後年、そのオッサンに見つかり、喉を噛みちぎられて死ぬ』という凄まじい俗説まで実しやかにささやかれる始末。

まあ、NMB48のメンバー須藤凜々花が結婚を発表したとなった途端、掌返ししてしまう一部のファンみたいなもんでしょうか。

今から300年前ですが、何も変わってない!

いってしまえば、春画なんてものも今で言うアダルトAVです。黄表紙は今で言うマンガですね。

独身の男にあふれていた江戸だからこそ、こうした独身男向けの産業が生まれ、それが長年支持されてきたことで、今に続く文化として残っているのです。

そう考えると、今の未婚化・非婚化というのは特に現代だけの異常なものでなく、むしろ戦争のない平和な時代には起こり得る当たり前の現象なのかもしれません。

堀口茉純さんの江戸のライフスタイルに関する内容が盛りだくさんの書籍はこちらです。ぜひどうぞ。 

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ついでに僕のもよろしくお願いします。江戸期の離婚率はなぜ世界一高かったのかという点と現代との類似点について書いてあります。

 

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